「赤ちゃんを取り上げるたびに、幸福感に包まれた」と話す中山茂樹さん=福井県小浜市多田の中山クリニック

 難産が予想されるときには、無事出産する夢を何度も見た。一番長い休暇は、父が亡くなった時の4日間だけ。寝食を忘れて奮闘してきたが、視力の衰えを感じ、産科を閉じることを決めた。

 引き継いでくれる医師を10年探し続けたが、見つからなかった。「都会の方が、医師がたくさんいて休みが取りやすく、田舎にはなかなか来てくれない」と残念がる。

 引退した今は「肩の荷が下りた感じ」で、ようやく熟睡できるようになったという。「子どもの相手は妻に任せっ放しだった」と申し訳なさそうに話す。

 第二の人生はフィリピンの病院で働く。直接出産には携わらないが、「現地の技術向上と生活習慣の啓発に努めたい」。産科医としての使命は、これからも全うするつもりだ。4月中には現地入りする。

 中山クリニックは小浜市内で産科がある唯一の民間医療施設だった。市内で出産を扱うのは杉田玄白記念公立小浜病院だけとなり、嶺南全体では敦賀市内の3カ所を含めて4カ所となる。

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