福井県知事選で敗れ、支持者におわびする西川一誠氏=4月7日午後8時半ごろ、福井県福井市

 選挙戦に突入すると、勢いはさらに増していった。「告示前の集会に来なかった企業からの支援が集まり始めている」と陣営幹部。自信は勝利への確信に変わっていった。

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 「反応は悪くないのになぜなんだ」。中盤戦、報道各社の世論調査で西川氏の劣勢が伝えられると、陣営幹部はうつろな表情で天を仰いだ。

 現職の強みで前回選挙の2倍を上回る約1500の企業・団体の推薦を得た。選挙期間中、街頭のミニ集会には多くの有権者が顔を出し、支援企業先では大勢の社員が出迎えた。夜の個人演説会は立ち見が出た。しかし熱気は乏しかった。なぜか。別の関係者は有権者の心理を一言で表現した。それは「飽き」だ。

 西川氏は4期16年で北陸新幹線の県内延伸や開業3年前倒しを実現し、健全財政を堅持しつつ、幸福度と学力・体力の日本一を定着させた。大きなミスのない手腕への高い評価は衆目の一致するところだったが「手堅さが皮肉にも地味な印象につながった」とこの関係者。マニフェストによるトップダウンの手法に不満を持つ県議、首長も少なくなかった。不特定多数のこうした思いが杉本氏の訴える「閉塞感の打破」と共振した。

 74歳の年齢もネックになった。福井新聞社による期日前投票の出口調査では、ほぼ全ての年代で杉本氏の支持が西川氏を上回った。その傾向は年代が上がるにつれて強まり、西川氏の個人演説会場でも同様の反応が見られた。70歳代男性はこう話した。「福井県のために尽くしてきた西川さんには感謝の気持ちでいっぱいだ。でも、もう若い人にバトンタッチする時だと思う」。

 杉本氏の政策と大きな違いがないことも不利に働いた。「西川県政の良い点は継承し、政策を磨き上げる」との杉本氏の主張に、多くの有権者は「それなら若い人に」と雪崩を打った。西川氏の「政治の継続と安定が大事だ。次の4年間で仕上げをさせてほしい」との訴えは世代交代を求める強風にかき消された。

 終盤戦、陣営幹部は力なく語った。「ようやく分かったよ。多くの有権者は『お疲れさまでした』という気持ちで西川氏と握手していたんだなって。だから街頭や個人演説会の反応が良かったんだ」。言葉を続けた。「敵は杉本氏じゃなかった。『もうそろそろ』という不特定多数の声と西川氏は戦っていたんだ」

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