【論説】統一地方選前半戦の知事選と県議選が投開票され、福井県知事選では前副知事の杉本達治氏が、5選を目指した現職の西川一誠氏、共産党新人の金元幸枝氏を抑え、初当選を果たした。

 3人が立候補した知事選は2003年に西川氏が初当選して以来。県庁での上司と部下、総務省(旧自治省)の先輩と後輩であり、政策的にも明確な違いがなく接戦も予想されたが、杉本氏が西川氏に9万票もの大差をつける圧勝だった。

 西川氏への多選批判が少なからずあったのに加え、選挙戦のさなかに新元号の「令和」が公表され、「新しい風を吹き込む」「新しい時代を拓(ひら)く」という杉本氏の訴えが有権者に受け入れられたようだ。

 杉本氏の公約は県民生活のあらゆる分野を網羅している。これら全てを実現できるか。財源が限られる中「選択と集中」が新知事の大きな課題になるのではないか。

 ■市町との連携強化■

 2月下旬の福井新聞政経懇話会で、杉本氏は県と17市町の関係を巡り「コミュニケーションが不足し、物事がうまく進んでいない」と批判する場面があった。そこが西川氏との違いだった。

 県との連携強化は市町の首長にとっても望むところ。ただ、連携の結果、施策としてどう具現化していくかが肝心だ。その時に武器になるのが公約に掲げた「徹底現場主義」だろう。

 杉本氏は、総務部長と副知事時代を含め6年間県政に関わった。告示前や選挙期間中も県内を隅々まで回り、地域の課題に向き合ってきたという。机上でなく自らの足と目で現状を確かめ、解決策を考える、この姿勢には賛同できる。就任後もぜひ現場主義を貫き、「県民が主役」の県政を実現してもらいたい。

 国との対等な関係を保てるかも注視したい。今回の選挙では自民党から得た推薦が大きく物を言った。そうはいっても知事は「県民党」の立場であり、政府や与党の方針に異を唱えなければならない場合もあるだろう。とりわけ原発政策については、集中立地県の知事として県民の安全・安心を確保する責任は重い。エネルギー政策の将来を含め国へ提言する気概を忘れないでほしい。

 ■実績アピールも■

 現職の西川氏は、4期16年の「実績と経験」を訴えてきた。特に「県債残高2000億円弱減少」「県内総生産3兆円突破」「若者のUターン率、4年連続増」などは高く評価できる。

 国体・障スポの成功もある。ただ、一般にはあまり認知されていなかったのが響いたのではないか。2月の決起大会では「言葉数が少ないと周りから言われる。どうも誤解されている」と述べたが、「誤解」を解くには至らなかった。トップダウン型の政治手法も、県職員や市町の理解を得にくかった。

 金元氏は両氏の激戦の中で埋没した感が否めない。安倍政権への批判を絡め、消費税増税反対や原発停止などを訴えたが、県政のかじ取り役としての立ち位置がいまひとつ浸透しなかったようだ。

 ■分断の溝解消を■

 保守分裂、業界や団体内の分断など、今回の知事選が残した溝は深いとの指摘が少なくない。杉本新知事には融和路線で臨んでほしい。西川氏の支持者も「福井県を何とか良くしたい」との思いは変わらないはずだ。それこそ現場主義を徹底し、対話を尽くす努力をしてもらいたい。

 人口減少や少子高齢化が進む中で「50年、100年先の発展」を展望するためには、県民が一丸となって取り組むことが不可欠だ。その意味で、今回知事選の投票率が58・35%と前回を10ポイント近く上回ったのは明るい兆しといえるだろう。

 杉本氏は「しがらみのなさ」や「公平、公正」を改めて強調している。当然とはいえ、知事として極めて重要な姿勢である。北陸新幹線敦賀開業や敦賀以西の着工、廃炉や40年超運転、使用済み燃料の処理といった原発問題などを、オール福井で着実にクリアしながら、激動の4年を乗り越えたい。

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