「日本の政治はゆっくり変わる」と話すパトリック・ハーランさん=東京都港区の明治記念館

 ―トランプ大統領ですが、メキシコ国境に壁を築くなど挑発的で排外的な言動が国内外で混乱を招いているように思います。なぜ、彼のような大統領が誕生したと考えていますか。

 まず、大方の評論家の説を言います。共和党と民主党が交互に政治を進めてきた中で、グローバル化が進み、地方の産業が疲弊して工場が閉鎖に追い込まれた。中産階級がどんどんしぼんで格差が拡大した。「金銭的格差」「教育的格差」そして「希望の格差」もね。そこから生まれた不満が根底にあって、トランプ大統領はこれまでの政治の規範とされるようなものを無視して「みんなの不満」を代弁した。

 「システムをぶっ壊す」という約束で当選して、間違いなくぶっ壊している。反トランプ派は「危ない」と声を上げるが、賛成派は「いいじゃん、もっとやれ」となる。

 僕の見方はちょっと違うんです。米国の政治で注目しているのは「事実の共有の欠如」と言えばいいんでしょうか。一つであるはずの事実がいくつもあるようになってしまっている。

 例えば移民問題です。実は米国への不法移民は今、50年ぶりの低水準。これが事実なんですけれど、共和党支持のテレビ局は「移民が押し寄せている」と伝える。ファクトやデータがずれた状態だから意見の違う人たちがお互いを説得し合えない。

 なぜトランプが登場するかというと、同じ事実を基にして議論することなく、不満を持つ人たちの不安をうまく巻き込んできたからだと考えています。

 ―みんなが投票しやすいように選挙制度にもう一工夫あっていいと思いませんか?

 ずっと続いてきた選挙制度がインターネット時代に適しているかというと、そうでないかもしれないですね。クレジットカードでオンライン投票できるようにするとか。それくらい簡素化できれば、投票するときには議員などの代表を選ぶと同時に「力を入れてもらいたい10項目」の住民投票をしてもいい。「どっちに投票しても変わらないけど」と思いながら投票するよりは「介護保険の充実に『賛成』『反対』」みたいな意思表示でね。そうすれば日本の政治はもっと強く動くかもしれない。

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