Bさんは、自分の料理の腕前とこれまでの医療関係でのお仕事のキャリアがそこで生かせると考えました。その両方を掛け合わせることで、仕事を通じて自分の“好き”が実現できるし、安定した収入にもつながります。再就職を決めたその介護施設は定年が65歳。「これから生きがいをもって働けそうです」と張り切っていらっしゃいます。

50代の共働き夫婦なら、「妻の老齢年金繰り下げ」も

最後にご紹介するケースは、無理せず「好きを仕事に」する方法です。

Cさん(57歳)は、同い年の奥様と一緒に面談に来られました。筆者は、ご夫婦のねんきん定期便と、それぞれの退職金見込み額を用い、今後のキャッシュフローをお示ししました。

1961年生まれの共働きご夫婦ですが、夫のCさんの年金受給開始は65歳から、奥様は特別支給の老齢厚生年金が62歳からと時間差が生じます。ねんきん定期便を基に奥様の特別支給は月約8万円、お2人が65歳になると年金は合計で月約30万円とわかりました。

ある先輩から「60歳以降も会社に残って働き続けると年金がもらえなくなる」と聞いたというお2人に、在職老齢年金制度の説明をしました。対象となるのは老齢厚生年金であり、仮に会社員という立場を外れて時間給で働くと年金額はカットされず、給料も満額いただけます。

「だったら、今の職場で、時給で働こうかしら。私は職場の雰囲気も好きだからストレスなく勤められそう」と奥様。ご主人は「君が働くのなら、僕はやりたかった植木屋さんになろう!」とニコニコしています。地元のシルバー人材センターに登録すると、庭木の手入れなどで収入を得られる機会があるそうです。

ご相談の結果、65歳以降はご主人の年金だけを受給し、奥様の老齢年金は繰り下げをすることにしました。今は女性の2人に1人が90歳以上になるというデータもあります。それを念頭に、奥様の年金を繰り下げによって少しでも増やそうと考えたのです。

奥様の65歳時点の年金受給見込み額は、基礎年金と厚生年金を合わせて月15万円ほど。これを5年繰り下げると20万円ほどに増えます。共働きだったCさんご夫婦は年金額に差があまりありません。したがって、仮にご主人が先に亡くなった場合、遺族厚生年金と奥様の老齢厚生年金では後者の額が大きくなるので、遺族年金は支給停止になります。それも考慮して、奥様の年金を繰り下げて一生涯のお金を確保するほうがよいと判断したのです。

ご夫婦は「老後のキャッシュフローが明確になって気が楽になりました」と、お帰りになりました。無理のない範囲で働きながら支出をコントロールすれば、年金生活でも何とかなるとわかったからでしょう。

定年後の生き方は人それぞれ、価値観も人それぞれです。しかし、誰しも定年後の暮らしは経済的な支えがあってこそ成り立ちます。なるべく早めに老後のキャッシュフローを算出したうえでライフプランも描き出し、それに対して自分の“好き”をどう生かしていくかを考えてはいかがでしょうか。(山中 伸枝 : ファイナンシャルプランナー(CFP(R)))

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