【論説】国土交通省発表の公示地価(今年1月1日時点)は、地方圏の全用途平均が1992年以来27年ぶりのプラスだった。けん引したのは地方の中でも中核的な地域の再開発や、訪日客の増加だとされる。その陰で、地方圏の調査地点のうち48%は下落していた。19%は横ばいである。地方の実態は全体の回復には程遠く、二極化が鮮明だ。

 福井県はどうか。住宅地はマイナス1・1%で、下落幅は都道府県の中で3番目。商業地もマイナス0・9%だった。厳しい数字ではある。ただ、下落幅はここ20年を見るとともに最小という明るい材料もある。福井が活気ある地域として歩めるのか、今が分岐点といえる。

 ■「個別化」現象も■

 地価の二極化が進む中で、なぜ全体が押し上がっているように見えるのか。例えば三大都市圏は、低金利に伴い都心部のオフィス、マンション需要が高まっている。半面、交通利便性に劣る周辺部では下落が起こるが、都心の上昇率が高いから圏域全体の平均値は上がる。

 地方でも同様で、県庁所在地などは中心部の地価が上がっているがそれ以外は下落する。もっと局所的に、「便利のいいマンション」の場所だけが上昇し周囲は下がる「個別化」が起きている地域も少なくない。

 地価上昇の主因は景気拡大という。しかし、拡大局面は2012年12月から続いてきたが、地価全体には波及していない。加えて今年に入り、景気の先行きは不透明になってきた。地方が活気を呼び込むにはあくまで、各地域の工夫が必要だ。

 ■地域戦略の明暗■

 独自の定住施策が地価に好影響を及ぼした都市がある。

 山形県東根市は若い世代の定住促進に力を注いだ。美術館と図書館を一体化した文化施設整備や県立中高一貫校の誘致などを進め、「地域で子育てをしている」とのイメージ定着に成功した。人口は約4万7千人で2000年に比べ約3千人増加。地価は住宅地で17年ぶり、商業地で27年ぶりにプラスだった。

 兵庫県明石市も子育て施策の手厚さで知られ、全国平均、県平均より出生率が高く、地価アップにつながっている。これらは、景気にあまり左右されない施策で結果的に人口増を果たした点が注目である。

 対照的に、資源を生かせていない地域もある。新潟県妙高市赤倉はスキー場や温泉を有するが、新幹線駅から距離があって投資を呼び込めず、商業地が4・1%下落。世界文化遺産「石見銀山遺跡」の玄関口に位置する島根県大田市も、観光ブームが去って苦戦している。観光頼みの地域戦略の怖さを物語る。

 ■延伸後を見据えて■

 福井県で間近の最大のトピックスは4年後の北陸新幹線敦賀延伸だが、これによる土地需要の高まりはどれだけ見込めるだろうか。富山県はすでに富山駅周辺の上昇が鈍化し、商業地の県平均はマイナス。北陸3県の商業地のプラスは石川県が引っ張った結果だ。新幹線への期待を現実化するには独自の地域戦略が欠かせない。在来線の在りようがどうなるかによっては県民にとって利便性が低下することも起こり得る。デメリットも視野に入れつつ、延伸後の姿を探らないといけない。

 幸い、今回の地価公表では、福井市周辺で住宅地が上昇するなどの追い風もあった。同市が来月、中核市としてスタートを切ることも将来像の議論材料になるだろう。

 地域にとって地価上昇だけが価値ではないが、活力を反映する指標なのは確か。統一地方選では各候補から、具体的な将来像が多く提示されることを望みたい。

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