通院しながら窃盗症治療を続ける女性。「裏切りたくない人が何十人とできた」と話す=群馬県渋川市の赤城高原ホスピタル

 万引を繰り返した末、刑務所に服役していた時、「今度はもっとうまく取ってやろう」と、頭の中でシミュレーションを重ねていた。仮出所の翌日、スーパーで食料品3点をズボンのポケットに入れて万引し、再び服役。北信越地方出身のこの50代男性は、盗む衝動を抑えられない精神疾患「窃盗症(クレプトマニア)」と診断された。

 日用品や食料品を万引するようになったのは20代前半。40代になるとエスカレートし、毎日のように繰り返した。計8度逮捕され、4度有罪判決を受けた。動機は仕事や人間関係でたまったストレスの発散。「商品が欲しいのではなく、盗むことが目的。悪いと思う気持ちはあっても先に手が出ていた」。盗んだ商品のほとんどは捨てていた。

 「ばれないかな。大丈夫かな」という恐怖感が、バンジージャンプで飛び降りる直前やジェットコースターの上り坂を上っている時のドキドキ感に似ているのだという。万引に成功すると達成感があり、ストレスがスーッと消えた。

 男性は昨年12月に仮出所すると、窃盗症治療のため群馬県にある「赤城高原ホスピタル」に入院した。治療の中心は患者同士のグループミーティング。体験談や誰にも言えなかった心境を正直に打ち明け、他の患者の話も聞く。「痛みを分かち合え、安心できた」と話す。

 竹村道夫院長によると、患者仲間や医療者と信頼関係を築くことができれば、心の空洞が満たされ窃盗衝動が起こりにくくなるという。男性は「今は商品を見ても盗みたいとは思わない」と自身の変化を感じている。

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