【論説】11道府県知事選が告示され、第19回統一地方選が幕を開けた。福井県は共産党新人の金元幸枝氏、前副知事で無所属新人の杉本達治氏、5選を目指す無所属現職の西川一誠氏の3氏が立候補し、舌戦に突入した。

 人口減少や少子高齢化の難題に加え、4年後の北陸新幹線敦賀延伸を見据えたまちづくり、廃炉や40年超運転に直面する原発など県政の課題は多岐にわたる。3氏が訴える政策を吟味し、貴重な1票を投じることで、県民の声を反映させなければならない。

 ■第一声■

 第一声で金元氏は「生活が大変で何とかしてほしいという県民の声に応えることこそ政治、県政だ」と強調。消費税増税や改憲反対、国民健康保険税への国費投入、大型公共事業費を県民生活に振り向けていくことなど党の方針を踏まえ論を展開した。

 杉本氏は「県民は新しい時代を求めている」と主張。子育て・教育、医療・福祉、企業誘致、農林水産業の成長産業化などに注力していく考えを示した上で、50年、100年先の発展を見据え、県政に長く責任を持てる体制を築く必要性を訴えた。

 西川氏は幸福度日本一、学力・体力日本一、国体・障スポの成功などの成果を掲げ、4期15年余の実績、経験を踏まえ「次の福井県の新しい姿をみなさんとつくる」と言及。共生社会や産業政策の推進などを挙げ「4年間任せてください」と締めくくった。

 ■政治手法■

 時間の制約からか、杉本氏の第一声に「原発」の言葉はなかった。西川氏は「国に物を申し、事業者と相談しながら、日本、世界のモデルとなるよう進める」などと述べたが、40年超運転や使用済み燃料の中間貯蔵といった具体論への言及はなかった。

 原発政策について両氏は、福井新聞政経懇話会や鯖江市で開かれた公開討論会、政策集で「安全が最優先」との立場は同じだ。再生可能エネルギーの拠点化もしかり。人口減対策、新幹線などについても明確といえるほどの違いはない。

 県庁では上司と部下、旧自治省(現総務省)では先輩と後輩。両氏はこうした関係で語られるが、本来は西川氏の多選を県民がどう評価するかだ。戦後の公選知事で最長が中川平太夫氏の5期。西川氏は当選すれば並ぶ。「長期政権」は公明正大であっても、とかくトップダウン型の政治手法が取り沙汰される。

 杉本氏が唱える市町との連携、現場主義もそうした状況を捉えてのことだろう。ただ「しがらみ」のなさを訴えても推薦という看板こそが、それだとの指摘もある。対立が両陣営のしがらみを浮き立たせる結果になっており、ここにも県民の目が注がれる。

 ■ミニ大統領■

 鯖江市の公開討論会は、定員千人に対して、200人にも満たなかった。昨今の国政選挙でも投票率の低下が顕著になってきている。政治離れが県民にもあるとすれば問題の根は深い。

 知事選の投票率をみると、西川氏の初当選時は新人3人の激戦で72・18%の高率だった。以降は「信任投票」の様相で2期目と3期目が50%台。4期目は48・59%と下降線を描く。

 決起大会で「言葉数が少なく、自分のことは語らない性格と周りから言われている」と自己分析した西川氏。告示前からつじ立ちするなど危機感が漂う。

 杉本氏は出馬表明が昨年11月。出遅れを挽回しようと、県内をくまなく歩いてきたとしているが、現時点で浸透度合いは陣営も測りかねている。

 金元氏は前回知事選にも挑んでいるが、衆院選の顔のイメージが先行しがち。国政レベルの政策への理解が県民に広がるかは見通せない。

 推薦や支持を出す団体などの報道が目立つ一方で、一般県民の投票行動につながるのか、疑問視する声もある。「ミニ大統領」と評され、権力を握る知事。誰を選ぶかが自分たちの暮らしに直結することを意識し、訴えに耳を傾けてほしい。

関連記事