FC東京―名古屋 後半、決勝ゴールを決めるFC東京・永井=味スタ

 シーズン終盤のような緊迫感はもちろん、ない。それでも「首位決戦」という響きには興味をそそられる。3月17日に開催されたJ1第4節では、首位の名古屋と2位のFC東京が直接対決した。

 名古屋の試合を直接見たいと思っていた。昨シーズンの最終節に、棚ボタでJ2との入れ替え戦をまぬがれた。来日一年目でリーグ得点王を獲得した絶対的エース・ジョーを擁しながらも、あの体たらく。チームとしての形を成していなかったのだろう。それが今シーズンは開幕から3連勝だ。しかも、9得点2失点。攻守のバランスも取れている。1試合平均3得点の攻撃力は魅力的だ。

 結論からいうと、期待したほどには名古屋の良さは目立たなかった。1―0でFC東京が勝利を収め、首位が入れ替わったのだが、名古屋は完璧にFC東京の策にはまった感じだ。その意味で、この日はFC東京の良さが引き立った。戦略面でも長谷川健太監督が、風間八宏監督を1枚上回ったといっていいだろう。

 前節で、FC東京は鳥栖に2―0の勝利を収めた。とはいえ、後半43分に相手のオウンゴールを誘うまでまったく攻め手を見いだせない状況だった。退場者を出して10人になった鳥栖が自陣を固めたということを加味しても、FC東京は引いた相手を崩すアイデアが少し足らない。一方、最終ラインを高くして攻めに出てくるチームを相手にすると、めっぽう強い。堅守速攻というチームスタイルが、ピタリとはまるのだ。名古屋戦は、まさにそれだった。

 試合後、長谷川監督は「お互いの特徴を出した試合。われわれのストロング(長所)を生かすことができた」と語ったが、まさにその言葉通りの展開になった。ジョーという最大の脅威を森重真人、チャン・ヒョンスの2CBを中心に封じ込めることに成功した。そして、相手守備ラインの後方にできた広大なスペースに、永井謙佑や東慶悟の攻撃陣が飛び出していく。名古屋の守備が決して堅いといえないことも相まって、チャンスの回数は多かった。そこで確実に決めていれば、前半で勝負がついていたかもしれない内容だった。

 マイナス面はあるものの、速さがこのレベルまでくれば、それだけで武器になる。永井のことだ。キックにもう少し正確さがあれば、恐ろしい選手になったに違いない。そのことが残念でならない。そして、名古屋戦の永井のプレーは、日本代表がワールドカップ(W杯)初出場を決めたジョホールバルのイラン戦にダブった。そう。チャンスを外しまくったにもかかわらず、決勝点を入れた野人・岡野雅行が「殊勲者」になるという構図だ。

 それにしても、永井はチャンスをつぶし続けた。開始4分、東のスルーパスを受けてGKランゲラックと1対1になるが、シュートは右へ。前半22分には相手との2対1の状況を作り出すが、永井のパスは相手DFへ。サイドを抜けてもクロスが相手DFに引っ掛かった。もし、敗戦を喫していたならば、戦犯として永井の名前が挙がってもおかしくはなかった。ただ、「FWは点を取れば他のミスは帳消しにされる」というのを、リーグ屈指のいだてんは実践してみせた。

 スルーパスを出した東の判断と技術、永井のスピードが見事にかみ合ったのは後半9分だった。組織的プレスからボールを奪い、左サイドで小川諒也が縦パスを出したとき、東は自陣方向に体を向けていた。しかし、状況は把握していた。「トラップした瞬間に永井選手が見えたので」と急激にターンしてのスルーパス。倒れ込みながら「内転筋を開くようにして(笑)」出したというラストパスは、永井のスピードを最大限に生かすものだった。

 一方、パスの受け手となった永井も質の高い動きを見せた。東がパスを出す瞬間までオフサイドを避けるために横への動きを入れて、ボールがキックされた瞬間にゴールに向かい方向転換。ドリブルの2タッチ目に右へボールを持ち出すことで、追いすがる名古屋DF丸山祐市をブロックすると、今度は正確にゴールにボールを流し込んだ。

 永井自身も狙い通りの得点だったという。「蹴る前に(名古屋は)ラインを上げるは分かっていたんで、そのタイミングで自分たちも一緒に下がってから出るというのを意識した」。名古屋のオフサイドトラップ破りを何度も繰り返したことが、結果として貴重な得点を生み出すことになった。

 無敗での首位奪取。なによりも名古屋の強力攻撃陣を無得点に封じたということに、価値がある。この試合で何度もジョーとの肉弾戦を繰り広げたチャン・ヒョンスは、特に気持ちが良さそうだ。

 「ホーム2連戦で無失点だったということは、チームとしても個人としても大きな意味を持つ。これがチームの土台だというところを見せられたと思う」

 強固な守備を基盤に、スピードに乗った攻撃を仕掛ける。攻めに出てくる相手にこそ、FC東京のサッカーは威力を発揮する。これにさらなる攻撃のパターンが加えられれば、チームはより魅力的なものになるはずだ。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。

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