再犯防止に向けた「指導」を受ける受刑者たち=2月18日、福井県福井市の福井刑務所(画像の一部を加工しています)

 「どうして盗んだの?」「盗んだ時の気持ちは?」。福井刑務所(福井県福井市)の一室で行われた、窃盗の再犯防止に向けた「指導」。万引などで服役中の30~70代の7人は、指導担当職員(46)に問い掛けられ、犯した罪を見つめ直していた。職員は最後に、一人一人の目を見ながら「刑務所に来てしまった事実は変えられないが、今後の人生は変えていける。自分が何をするべきか考え、行動してほしい」と訴えた。

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 指導は1回90分。講義やグループワークを中心に、3カ月で計6回行われる。発言や意見を否定したり非難したりしないことがルールだ。

 2月18日のテーマは「犯罪による被害」。職員から盗んだきっかけを聞かれると、受刑者たちは「仕事をしていなくてお金がなかった」「生活に計画性がなく年金を使い切ってしまった」と順番に答え、犯行時の心境や生活については「以前も盗めたので今回もいけると思った」「万引が仕事代わりになっていた」と続けた。職員との話し合いを通し、自分の思考や行動パターン、問題点を分析。最後は、二度と加害者にならないために「仕事をしてお金を稼ぐ」「貯金し、お金の使い方を考える」「刑務所での生活を思い出す」と発表し合った。

 「三人寄れば文殊の知恵」。職員はこう語り、互いの声に耳を傾けることで自分になかった視点に気付いてほしいと説いた。7人の更生を願い、「一つ一つ考えながら生活すれば、必ず良い方向にいく」と優しく語りかけた。

 この日指導を受けていた60代男性は、東海地方のコンビニで缶酎ハイ1本を万引。実刑判決を受け昨年1月、福井刑務所で初めて服役した。万引で2度の有罪判決を受けた末の実刑。盗んだのはいずれも缶酎ハイだった。

 1度目は罰金20万円。「割に合わない」と反省したはずだったが、「お酒を飲みたい」という欲望に勝てず、再び万引で捕まり懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた。執行猶予期間中の17年夏に3度目の逮捕となり、2年服役することになった。

 「1本くらいだったら大丈夫」「見つかった時はお金を払って謝れば許してもらえる」「今回も執行猶予になるだろう」。こうした自身の「甘い考え」が、服役という重い代償で返ってきた形だが、再犯防止に向けた指導を受けるうちに認識は変わりつつある。「1円や10円でも人の物。売っている人のことを考えれば大変な罪」と思えるようになった。

 服役が決まると、拘置所で、音信不通だった息子と4年ぶりに再会した。出所まで残り1年を切った。「(息子は)腹を立てていたと思う」と推し量りながらも、「人に迷惑を掛けない生活を送りたい。そして息子に堂々と顔を向けられるようになりたい」と懸命に努力している。

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