【論説】インターネット上の違法ダウンロード規制を強化する著作権法改正案が関係者や一般ユーザーの猛反発を受け、今国会への提出見送りに追い込まれた。自民党の文部科学部会と知的財産戦略調査会がいったん了承した法案の提出見送りは異例である。

 海賊版対策は必要ではあるが、論点が残っている以上、提出を先送りして修正を図る判断は妥当だ。だが、問題を抱える法案が提出寸前まで進んだ経緯からは政府・与党の強引さが浮かび上がる。

 改正案は、音楽と映像に限っていた違法ダウンロードの対象を漫画や論文、写真などあらゆるコンテンツに拡大。個人ブログ、会員制交流サイト(SNS)からのダウンロードやスクリーンショット(画面保存)も規制対象とし、悪質なケースは刑事罰を科すことが柱となっていた。

 これは、私的な情報収集まで規制対象になりかねない恐れがあり、ネット利用が萎縮するなど国民生活への影響が大きい。海賊版対策を求めてきた漫画家団体などからも次々反対論が出され、ネットユーザーには不安が広がっていた。

 1月、日本マンガ学会(竹宮恵子会長)が反対声明を発表。2月13日に文化審議会が規制強化の最終報告をまとめると、著作権に詳しい専門家らが19日、報告の問題点を緊急声明として公表した。

 しかし、22日の自民党関係部会は法案提出をあっさり了承してしまう。明治大学知的財産法政策研究所ワーキンググループが、部会に文化庁が出した資料を検証したリポートには、疑問点が満載だ。一例が「幅広い関係者の意見を総合的に勘案したバランスの取れた内容」との記載。関係者から相次いだ反対意見は、まるで無視されていた。

 27日、今度は日本漫画家協会(里中満智子理事長)が異議を唱えると、3月1日の党総務会は部会に判断を差し戻したが、6日の部会は修正を図ることなく法案を再度了承した。

 文化庁も自民党も立ち止まって審議をやり直す機会は何度もあった。だが、国民に幅広い規制の網を掛ける狙いの法案にもかかわらず、関係者の声に耳を傾ける姿勢はうかがえなかった。6日の部会では幹部から「政治論としての判断だ」との発言もあったという。統一地方選、参院選を控え、実績づくりを急いでいたとみられても仕方ない。

 1週間後、自民が一転して見送りを決めたのは慎重派議員の巻き返しによる。法案の不備が認識されたというより、選挙を前に「ネットユーザーの支持層が離反する」という「政治論」が決め手だったようだ。

 法案には海賊版サイトに誘導する「リーチサイト」の規制など、評価されている部分もあったが、それでも漫画家団体などからは、提出見送りを歓迎する声が上がった。拙速な議論が、あるべき規制まで遠のかせ、そのつけは結局国民が負う。政府・与党は修正に真摯(しんし)に取り組まなければならない。

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