高度に進んだ日本のお笑い。なぜおかしいのか? おかしいとおかしくないの境界はどこにあるのか? いとうせいこうがお笑いのロジックと技術について実作者と語り合った。

 相手は時代の笑いを生み出してきた倉本美津留、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、バカリズム、枡野浩一、宮沢章夫、きたろうの6人。軽やかな対論から笑いの定式が次々と繰り出される。

 「ギャップは笑える」(高い声をしたヤクザ)、「無自覚はおかしい」(自分だけ異常に長い箸で黙々と食べる)、「ノーマークは笑いを生む」(ずっと黙っていた人間が突然何か言う)、「真剣になりすぎているヤツ」はおかしい――といった比較的わかりやすい法則から、「愛は笑いを倍増する」「神経の興奮の行き先を混乱させる」といった高度な仮説まで。なかでも演じ手は形をなぞらず、「今それが起きているように新鮮にやる」ことの重要性と難しさが強調される。

 といっても、観客を前にした掛け合いは、互いに具体例を挙げあって「笑いを取る」場でもある。著者ときたろうとのやりとりは、もはや絶妙なボケとツッコミによる漫才だ。

 泣かせる方法や感動させるコツに比べて、笑わせる技術は難解で奥深い。時代や国によって異なり、世代によっても違う。それだけ法則化は難しい。対談からは、お笑いが進化したここ半世紀、驚くばかりの研究と実験が現場で重ねられてきたことが分かる。お笑い論の必読書であり、現代文化史の貴重な証言集でもある。

(講談社 1500円+税)=片岡義博

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