全国都道府県対抗男子駅伝で初優勝を果たした福島のアンカー・相沢晃=広島・平和記念公園

 3月10日に東京・立川にある昭和記念公園で行われた日本学生ハーフマラソン選手権。

 今年の大会は7月にイタリアのナポリで開催されるユニバーシアードの予選会を兼ねているため、各大学の「本気度」が高かった。

 観戦ポイントを移動しながらレースの流れを追いかけるのだが、一人だけ余裕度が違う選手がいた。東洋大の相澤晃である。

 相澤は今年の箱根駅伝の4区で区間新をマークし、ライバルの青学大の原晋監督が、「彼は本当に強い。一人で先頭に立って、押し切ることを恐れない選手です。マラソンに転向したら、将来が楽しみでしょうね」と手放しで称賛するほどの実力者だ。 

 その相澤の走りを間近で見て驚いた。惚れ惚れするようなフォームなのである。

 まず、腰の位置が他の選手に比べて明らかに高い。陸上競技では距離の長短にかかわらず、腰の位置が重要だ。高ければ、それだけストライドの幅が大きくなる。

ただし、今回ばかりは一人で押し切ることはしなかった。

 東洋大の酒井俊幸監督からは、「あまり前で引っ張らなくていいから。5キロあたりまでは抑えていこう」と戦術を授けられ、集団の中で力をためる作戦をとった。

 いつ、相澤が集団をリードするのか…。そう思っていたところ、中間点付近で気持ちよさそうに集団の前方へとポジションをチェンジした。

 相澤は振り返る。

 「最初の10キロは想定していたペースよりも遅かったんですが、それからは自分のリズムで仕掛けられたので、プラン通りのレース展開でした」

 長距離ファンが詰めかけたゴール直前の最後の下り坂。相澤の表情には余裕があり、しかもフォームにブレがなかった。

 タイムは自己ベストとなる1時間1分45秒での優勝。これでユニバーシアードのハーフマラソン代表に内定した。

 優勝が予想されたなかでの横綱相撲である。逸材であるのは間違いないが、マラソンでは東京オリンピックに間に合わないのがなんとも残念だ。

 2024年のパリ・オリンピックでは、日本を代表する選手の一人になっていることを期待したい。

 もう一つ、今大会の特徴として挙げておきたいのが、上位に食い込んだ選手の勢力図にも「変動」があったことだ。

 ここ数年、日本学生ハーフといえば青学大の選手が上位に来るのが定番だったが、今回は2位に中村大聖(駒沢大)、3位に伊藤達彦(東京国際大)が入った。

 トップ10の顔ぶれを見ると駒沢大が3人、国学院大が2人、東洋大、東京国際大、東海大、帝京大、中央学院大が一人ずつになった。

 また、11位から14位を帝京大勢が占めて充実ぶりをうかがわせ、青学大は吉田祐也が18位に入ったのがやっと。

 原監督も渋い表情だった。

 「もう、青学の時代とか言っている場合じゃないですね。本当に他の学校が力をつけてきて、学生長距離界全体のレベルが上がってます。油断は禁物です」

 2019年はトラック、駅伝の勢力図も変わりそうな気配がしてきた。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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