【越山若水】日本語には英語にない独特の言い回しや微妙なニュアンスを持つ表現がある。確かに文化や歴史の違いもあって、外国人に説明するにもなかなか難しい言葉が多い▼「英語にない日本語」(フォーンクルック幹治著、河出書房新社)には「いただきます」「きゅんとする」「ありがた迷惑」「花吹雪」などが掲載されている▼さて、本日ここで取り上げるのは「なあなあ」である。念のため解説すれば、互いの主張を適当なところで折り合いを付けること。「なれ合い」の意味で使われる▼もとは歌舞伎が由来である。役者同士が耳元でひそひそと内緒話をする場面。片方が「なあ」と呼びかけると、相方も「なあ」と返事する。実は口パクだが、いかにも意思疎通を図ったように見える▼毎月勤労統計に続き、賃金構造基本統計の不正が発覚した厚生労働省に対し、総務省は長年にわたる不正は「事なかれ主義のまん延」「順法意識の欠如」が原因と指弾した▼調査員が訪問せず郵送で済ませたり、対象業種を省略したり手抜きが横行。その実態を10年以上前から認識しながら、ほったらかしとはお粗末の限り▼先の「英語にない―」は、「なあなあ」は単に「妥協」の意味だけでなく、集団性を重んじる日本的な感覚が潜んでいると分析する。一連の統計不正に、国民生活より組織維持を大事にする土壌はないだろうか。

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