【論説】米朝首脳会談が事実上決裂して1週間が経過した。この間、北朝鮮側の懸念される動きが相次いで伝えられている。米国に拠点を置く北朝鮮分析サイトは5日、北西部東倉里(トンチャンリ)のミサイル関連施設の復旧が進んでいると発表。7日には平壌(ピョンヤン)郊外の大陸間弾道ミサイル(ICBM)製造施設で車両の動きがあると韓国紙が報道した。米朝の非核化協議は、急速に先行きが見えなくなっている。

 米朝が物別れに至った経緯が、徐々に明らかになっている。6日の米国での報道によれば、会談2日目に協議が物別れになった後、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は部下を介して妥協案を米側に示した。それでも米側は交渉再開に応じず、会場のホテルを後にした。北朝鮮側の誤算と動揺が浮き彫りとなるエピソードだ。

 北朝鮮はハノイ訪問が成功だったと国内宣伝に力を入れているが、金氏に焦りが生じていても不思議ではない。北朝鮮幹部は今月1日、核・ミサイル開発路線への回帰を意味する「新たな道」に言及しており、同国のミサイル拠点で動きがみられることと符合する。国際原子力機関(IAEA)は4日、北朝鮮がウラン濃縮施設を使用している兆候があると定例理事会で報告している。

 米側は協議が物別れになった後も北朝鮮への配慮姿勢を見せていた。春の米韓合同軍事演習を終了すると発表した際、トランプ氏は費用節約を理由にしつつ「北朝鮮との緊張緩和も良いことだ」とツイート。しかし、ミサイル関連施設の復旧の情報に接したときは、「もし事実なら、金氏に非常に失望するだろう」と強くけん制するに至った。

 米側は今後の交渉について「ボールは北朝鮮側にある」(ボルトン大統領補佐官)としている。だが、北朝鮮は戦略練り直しに迫られている。北朝鮮が実際にミサイル実験に動く可能性は低いだろうが、両国が再びテーブルに着くまで時間を要するのは必至だ。

 日本としては、トランプ氏が金氏に拉致問題を提起した今、事態を何とかして動かす必要がある。安倍晋三首相は拉致被害者家族の前で、日朝首脳会談実現への意欲を改めて語った。むろんトップの意欲だけで会談が実現するほど甘くはなく、どう道筋を描くかである。

 北朝鮮が行き詰まっている今、対日接近を図るとの観測もある。だが、金氏は米朝会談の結果に失望しているとされ、それが日朝会談実現にどう影響するかは読みづらく、楽観はできない。

 鍵を握るのはやはり日米韓の連携だろう。3カ国は6日、米朝会談が物別れになってから初の高官同士の直接協議を行った。核、ミサイルはもちろん、拉致問題も含めて緊密に連携する方針を確認したのは妥当だ。日朝交渉は、米韓の協力なしには果たせないからである。日韓関係は最悪の状態が続くが、こうした協議の場を通じ、徐々に一致点を見いだしていくほかない。

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