【論説】中国の全国人民代表大会(全人代=国会)が開幕し、李克強(りこっきょう)首相は2019年の経済成長率目標を「6・0~6・5%」にすると表明した。前年の「6・5%前後」から引き下げたとはいえ、実体経済からいえば楽観すぎるといった声が少なくない。

 中国経済は、金融規制などの強化により企業の資金繰りが悪化し、そこに米中貿易戦争が追い打ちをかけ、景気は一気に減速。企業破綻などが相次ぎ、日本を含む世界経済にも影響が広がっている。政府が発表した昨年の成長率は6・6%で28年ぶりの低水準となったが、国内の専門家からはこの数字以上に悪いとの指摘もある。

 李氏の政府活動報告には減税やインフラ投資の拡大などの景気刺激策が並び、大盤振る舞いの様相だ。世界第2位の経済大国の景気浮揚は、対中輸出に依存する日本企業などにとっては歓迎したいが、膨れ上がる債務リスクへの警戒を怠ってはならない。

 李氏が昨年を振り返り「特に米中貿易摩擦が一部企業の生産経営や市場の期待に不利な影響を与えた」と総括したように、最大のリスクは対米貿易交渉であることはまぎれもない。

 米国が要求するのは▽貿易不均衡の是正▽知的財産権の保護▽技術移転強要の停止▽市場開放―などの構造改革だ。李氏は「知的財産権の保護を全面的に強化する」「全方位の対外開放を推進する」と改めて確約した。全人代では、外国企業の技術を強制的に移転させることを禁じる「外商投資法」が成立する見通しという。さらに、米報道では、中国が24年までに対米貿易黒字をゼロにするため、輸入を大幅に増やす妥協案を示したともされる。

 トランプ米大統領は実務者協議を受け、妥結姿勢に傾いているとみられる。米紙は米中首脳が27日にも会談し、正式に合意する可能性があると伝えた。ただ、中国政府による国営企業への支援や、情報統制など習近平(しゅうきんぺい)指導部「1強」体制の根幹に関わる問題などで交渉が難航する懸念もある。中国が経済大国にふさわしい公正な経済体制構築を確約できるかが鍵となろう。

 日本など周辺国にとって憂慮すべきは、中国が経済低迷下でも軍拡は継続するとの姿勢だ。19年予算案では国防費として前年比7・5%増の約1兆1898億元(約19兆8千億円)を計上。日本の防衛費の約4倍で、研究開発費など未計上分を含めると2~3倍の規模との分析もある。

 李氏は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの交渉の推進にも触れた。保護主義に走る米国へのけん制でもあるが、自由貿易の旗を振る日本には追い風になろう。一方で巨大経済圏構想「一帯一路」でも日本との連携を推進するとの目標が盛り込まれた。中国は米国の貿易要求をのんだ場合、外貨減は免れず、その分を一帯一路で補おうとするはずだ。日本の「信用力」を利用する思惑が透ける。ここは毅然(きぜん)とした姿勢を貫く必要がある。

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