啓新高校野球部の練習をじっと見守る大嶋誠さん=3月1日、福井県坂井市の啓新高校野球部グラウンド

 選抜高校野球大会(3月23日開幕・甲子園)に初めて出場する福井県の啓新高校野球部を、創部1年目から支え続けてきた男性がいる。球拾い、グラウンドの整備、周辺の草刈りなどを手伝い、記念試合では球審も務めた。いまや同部に欠かせない“功労者”は「甲子園出場が決まり、涙が出るほどうれしい。自分たちが持っている力を存分に発揮してほしい」と選手たちの晴れ舞台を楽しみにしている。

 男性は大嶋誠さん(71)=福井県坂井市。武生工業高校出身で高校時代は野球に打ち込み、卒業後は審判員となった。公式戦の審判員は退いたものの、今でも練習試合などでジャッジをふるうキャリア約50年の大ベテランだ。

 啓新高校野球部との関わりは2012年春にさかのぼる。坂井市の三国運動公園野球場を散歩中にたまたま出会ったのが、創部間もない啓新だった。「どんなチームだろう」。当時の大八木治監督に見学を願い出ると、受け入れてくれた。部員はわずか16人。聞けば、練習場所もないという。厳しい環境だ。それでも懸命に白球を追う姿を目の当たりにし、「応援しようと決めた」。

 県内各地での練習を追いかけ「少しでも役に立ちたい」と外野の球拾いに奔走した。関係が深まる中でさらに偶然が重なった。同年冬、大嶋さんの近所でグラウンドを建設する話が出た。区長を務めていたこともあり、地権者との交渉や住民への説明に力を貸した。創部から2年がたった14年の春。ついに専用グラウンドが完成した。こけら落としの練習試合で大嶋さんは球審を務めた。「大事なゲームで大役を任され幸せだった」

 数多くの球児を見てきた大嶋さんが、啓新に肩入れするには理由がある。「本当にまじめなチーム。礼儀正しく気持ちがいい。野球に懸ける思いが伝わってくる」。時間が許す限り球場に顔を出し、県外の試合にも何度も足を運んだ。植松照智監督は「一番の理解者。選手一人一人を気にかけてくれる」と感服する。

 3月1日は今年初めてグラウンド練習が行われ、激励に訪れた。「良い動き。冬のブランクを感じさせない」と声を弾ませた大嶋さん。初の甲子園まで、あと約3週間。「甲子園の観戦は何度もしているがいつも内野席。今回だけはアルプス席で大声を出しますよ」。選手以上にそのときを心待ちにしている。

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