【論説】「分断」を乗り越えて出した地元の意思を、たった20分の話し合いで済まされることには違和感を拭えない。

 沖縄県の玉城デニー知事が、米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設に伴う新基地建設を巡って実施された県民投票の結果を、安倍晋三首相と在日米大使館に通知した。

 玉城氏が「辺野古移設断念を求める民意が初めて明確にされたことは、極めて重要な意義がある」と工事中止を求めたのに対して、首相は「(移設は)もはや先送りできない」と、国会で繰り返した紋切り型の返答に終始した。知事との対話の継続には触れたものの、これでは昨年秋の2度の会談と同様、門前払いの扱いではないか。

 玉城氏は、日米両政府と県による「3者協議」の場を設けるよう提案したが、首相は答えなかったという。県民投票の期間中、菅義偉官房長官は、普天間の危険性除去について「知事は何も語っていない」と批判を強めた。外交や安全保障は「国の専権事項」であり、知事が具体的な方策などを示せるはずもない。3者協議は知事にできる範囲の提案であり、政府は真剣に向き合うべきだ。

 沖縄が抱える課題や悩みの解決に向けて日米両政府が一体となって汗をかく―県民はそうした姿勢こそ求めているのではないか。地元の専門家からは、本土などの自衛隊の基地に米軍を移し、共同で使うといった案が示されている。米政府には、普天間の海兵隊をアジアや太平洋の基地に巡回させるよう再考を促すことも求めている。

 玉城氏は会談で辺野古沖の軟弱地盤にも言及。首相は事務方から「現在の工法でも十分可能だ」との説明を受けたことを伝えた。だが、防衛省は国会で「精査が必要」とし、工期や費用も示さない。沖縄の試算では13年、2兆5千億円以上を要するとしている。普天間の危険性が13年間も放置されることになる。これこそ3者協議で早急に話し合うべき課題ではないか。

 県民投票は、安倍政権に近いとされる5市長が「民意を推し量るのが難しい」などとして不参加を表明。一時は県民の約3割が投票権を奪われかねなかった。賛否に「どちらでもない」を選択肢に加えたことでそうした事態は回避された。

 「分断」があらわになる中、7割超が「反対」し、投票資格者の4分の1を大きく上回る43万票に上った。辺野古ありき一辺倒の冷淡な姿勢が沖縄の不信感につながっていることを政府は知るべきだ。

 首相は「県民投票の結果を真摯(しんし)に受け止める」と述べた。ならば、現在行っている埋め立て工事を中断し、話し合いに応じるしかない。国と地方が法廷闘争を繰り返すような状況は避けなければならない。

 在日米軍専用施設はかつて本土と沖縄に9対1の割合で置かれていた。本土の基地反対運動を受け移され、今は沖縄に7割が集中する。その現状を国民全体で考え直す必要がある。

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