【論説】これでは「お手盛り」批判を浴びた先月の報告書の内容を上書きしただけではないか。「第三者性」を前面にしながら、どこまで切り込んだというのか。

 「毎月勤労統計」不正問題で、厚生労働省の特別監察委員会が再調査結果をまとめた報告書は、担当課レベルで綿密な打ち合わせや周到な準備の形跡がなかったことなどから組織的な隠蔽を改めて否定した。幹部は不正を認識せず隠蔽の指示をしていなかったとも認定。組織防衛の論理から、関与した職員らが前言を翻すはずもなく、前回調査をなぞっただけではないか。

 不正の発端となった2004年から始まった東京都分の全数調査から抽出調査への変更に関して、前回報告書は、都や対象事業所からの聴取がないまま「苦情」などを理由に挙げた。今回は聴取したものの、理由は「発見に至らなかった」としている。抽出調査の場合に必要な補正処理をしなかった点は、当時のシステム改修担当だった職員の死去で「新たな事実は確認できなかった」とした。15年前のこととはいえ、切り込み不足は否めない。

 不正に気付き修正できる機会が何度もあったことに触れている。だが、担当者が他の業務に忙殺されたり、影響は少ないといった認識が引き継がれたりしてきたことなどを指摘。担当課(室)の職員らが「虚偽の説明」を繰り返しながら「深刻な不正」だと捉えていなかったことから「意図的に隠したとまでは認められない」と結論付けた。

 これでは「担当者が上司への相談なく判断」「漫然と前例踏襲」とし「意図的までとは認められない」とした前回報告書の域を出ていない。「組織的隠蔽」を取り上げた上で否定したのも判然としない。野党議員からは「前よりもひどい」との声が上がっている。

 国会で「官邸の関与」が焦点となっている15年の有識者検討会にも触れている。これも、抽出調査を説明しなかったとの観点からの言及にとどまる。検討会で決まりかけていた調査手法が突然変更され、東京都の抽出調査分に対する補正処理もこっそり導入された。監察委としてこの間の経緯を検証すべきなのに、変更を「統計学的にも十分な合理性が認められる」と明記したのは解せない。

 政府、与党は今回の報告を幕引き材料にしたい思惑のようだが、検討会での変更はいかにも不自然だ。衆院予算委員会の公聴会で、上西充子法政大教授が「官邸主導で進められ、強引に検討会の結論がねじ曲げられた、とみるのが妥当」と述べたのも当然だろう。

 統計委員会の委員長が多忙を理由に国会審議への出席に応じない旨の文書を巡っては、総務省職員が無断で作成し配布していたことが判明した。統計を所管する省にあるまじき事態だ。政権や与党に加え、官僚までが国会の行政監視機能を減じようとしているとしか思えない。再発防止のためには原因の徹底解明しかない。揺らいだ統計への信頼回復はそこにしかない。

関連記事