【論説】小浜市が産地化を進めている薬用植物のコウギクを巡る動きが広がりを見せている。栽培する農家、関連商品を出す店舗が徐々に増えているほか、血糖値上昇を抑制する働きが県立大で確認されたとのトピックスもある。食のまちづくりを掲げ多彩な食文化を誇る同市だけに、健康食材になるコウギクが特産品に育てば一段と層が厚くなる。

 コウギクは菊の一種で、菊花として漢方薬の材料に使われる。同市で栽培が本格的に始まったのは2015年。若狭東高が文部科学省からスーパー・プロフェッショナル・ハイスクールに指定されたことを受け、コウギクの栽培と商品開発に着手した。この年に同校と市が産地化を目指した協定を締結。翌16年からは市地域おこし協力隊の男性が10アールの畑で栽培を始めた。

 その後、市内でメガファームを運営する「若狭の恵」も加わり、本年度は約500株の苗を農家や飲食関係者に配布し、栽培面積を拡大した。商品開発では、市内のカフェやパン店がグラタン、あんパンなどコウギク入りの品を続々と開発している。

 県立大の研究は、17年に市と締結した包括的連携協定の一環。マウスでの実験で、コウギクを摂取することにより血糖値の上昇を抑えるほか、動脈硬化を抑制する作用が確認された。人間にどの程度有効かは今後の研究次第という。菓子などの商品に活用しても薬効をうたえるわけではないが、健康増進へのイメージアップには役立つだろう。

 最近になって始まったコウギク栽培だが、歴史をひもとくと若狭地方は菊と縁がある。平安時代の資料には、若狭から朝廷に献上された薬草として「黄菊花」が記載され、広く栽培されていた状況がうかがえる。

 若狭地方は朝廷に食材を献じた御食国(みけつくに)として知られ、市では「御食国アカデミー」と銘打ったPR事業を展開している。歴史ある食のまちとしてアピールしているだけに、コウギクを御食国のイメージに合わせ売り出すのも手だ。

 また、小浜の偉人、杉田玄白は「養生七不可(ようじょうしちふか)」という健康維持に関する心得を残している。これにヒントを得て市では薬膳教室を展開するなど、健康に役立つ食の普及に取り組んでおり、これにもコウギクが一役買いそうだ。

 漢方薬の材料とするための販売ルートや加工技術の確立は容易ではなく、食材として活用するのが現実的だ。市もまずは市民レベルでの普及に力を入れている。コウギクが市民に親しまれる食材となり、小浜を訪れた人たちに喜んでもらえる素材に育てるためにも、市と民間による継続的な取り組みが期待される。

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