自身の経験を生かし、患者の運動機能の回復をサポートする唐川和宏さん=東京都大田区の町田整形外科

 美方高校(福井県)や順天堂大学で駅伝の選手として励む中、足に力が入らなくなる通称「ぬけぬけ病」に悩まされ競技を退いた福井県坂井市出身の男性が、理学療法士として治療法を学ぶとともに、若い選手らをサポートしている。競技引退後、走れない苦しみを思い出しうつ病にもなったが、ぬけぬけ病を専門とする理学療法士と出会って奮起した。3月4日に、スポーツ選手やその家族を対象にした相談会を福井市で開く。

 男性は唐川和宏さん(29)=東京。福井県中学駅伝に出場し、スカウトされ美方高校に進んだ。2007年の全国高校総体陸上男子5千メートルで7位入賞、全国都道府県対抗男子駅伝では区間7位を記録するなど活躍。一方で高校2年生の中ごろから、3千メートル以上走る練習や競技の最中、一時的に右足が棒になるような感覚に襲われるようになった。

 競技を止めようかと悩みながらも08年、箱根駅伝の常連校で強豪の順天堂大学に進学。歩くだけでも違和感を覚えるまでに症状が悪化し、原因が分からないまま3年生の冬に退部した。その後、医療系の専門学校に進学。友人が出場する陸上大会を見に行ったところ、急に体調異変が起き、外出ができなくなり、うつ病と診断された。

 転機は16年4月。アテネ五輪女子マラソン金メダリスト、野口みずき選手が現役引退、自分と同じ症状をかかえていたとニュースで知った。調べるうちに「ぬけぬけ病」の存在や、専門の理学療法士が福岡県にいると分かった。「自分も悩める選手の支えになりたい」と改めて理学療法士を目指し、17年に国家試験に合格した。

 現在は都内の整形外科医院で患者のリハビリを支える一方、「ぬけぬけ病」の知識を深めるとともに、友人が顧問を務める高校陸上部で、経験を基に選手たちに心身両面にわたる幅広いアドバイスをしている。

 「走る時に腰が落ちる選手は、目線が低かったり体が硬かったりする。自分の体の特徴を知れば、フォームが狂う原因が見えてくる」と、体のバランスの取り方などを伝えている。「『部活をやっている意味はあるのか』といった素朴な悩みにも対応していきたい」と話す。

 昨年の箱根駅伝で途中で走れなくなった選手が「ぬけぬけ病」と指摘されるなど、病気の認知も進んできたが、原因も含め、まだまだ未知の領域にある。「周囲の理解が少なかったことも症状の悪化につながったと思う。僕のように『頑張りたいけど頑張れない』というもどかしい思いの選手が1人でも減るよう、病気についても広く知ってもらいたい」と力を込める。

 4日の相談会は午前10時から午後6時まで、福井市中央1丁目のクマゴローカフェで。相談無料で中高生にはワンドリンクサービスがある。

関連記事