【論説】来週はトランプ米大統領から目を離せそうにない。2度目の米朝首脳会談が開催され、米中貿易交渉は最終期限を迎える。さらにロシア疑惑に関する捜査報告書が議会に示されるという。予測不能の大統領はどう動くのだろうか。

 米内政の混乱は、トランプ氏が公約であるメキシコ国境の壁建設費用を捻出するために、国家非常事態を宣言したことで一気に深まった。先の議会中間選挙で下院の主導権を野党の民主党に握られた以上、予想されたこととはいえ、対立の激化は避けられない。

 57億ドルの建設費を求めるトランプ氏にとって、14億ドルで妥協するわけにはいかず、81億ドルを捻出する非常事態宣言に打って出るしかなかったといえる。次期大統領選に向け強固な支持層に応えるためには、妥協よりも対立を示してこそアピールになるとの読みだ。

 議会が宣言の不承認決議をしても、拒否権を発動するだろう。違憲訴訟を起こされることも想定内。トランプ氏が「最高裁では勝利だ」と言い放ったのは、保守派が多数の最高裁では勝算ありとの胸算用だが、長期対立が必至となれば、捨てぜりふにも聞こえる。

 ロシア疑惑の中身次第で民主党は大統領の弾劾に動くとみられる。懸念されるのは、内政で混迷を深めるトランプ氏が外交や通商問題で華々しい成果を見せつけようと安易な妥協を繰り返す可能性があることだ。

 27、28日にハノイで開かれる米朝首脳会談を巡り、トランプ氏が北朝鮮の非核化に関して「核実験がない限り、急がない」と明言したことも臆測を呼んでいる。実務者協議では具体的な非核化の道筋は描けていないとの指摘があるからだ。

 北朝鮮はもともと「段階的非核化」を掲げ、トップ同士の直接交渉で果実を得ようしている。トランプ氏自身も「これが最後の会談になるとは思わない」と述べ「段階的」にかじを切ったとの見方もされる。一部核施設廃棄などを示す北朝鮮に対して、見返りとして経済制裁の解除に踏み切る可能性も否定できない。

 日本にとって最悪のシナリオは、トランプ氏が米国本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄といった妥協案をのむ展開だ。昨年6月の初会談のように「政治ショー」に終われば、拉致問題の解決も遠のくことになりかねない。

 米中貿易協議は3月1日に交渉期限を迎える。トランプ氏は「話し合いはとてもうまくいっている」と述べる一方で、交渉期限を延長する可能性に触れている。米議会や世論が一致して求めるのは、知的財産権保護や技術移転の強要見直し、国有企業の優遇といった構造的問題の解決だ。

 交渉延長はそのためのものではないのか。トランプ氏が米国産品の購入などで安易に妥協した場合、米国内の反発は避けられず、苦境に陥ることは明らか。だからといって、関税合戦の再燃は世界経済にとって大きなリスクとなる。「トランプリスク」への備えを日本も怠ってはならない。

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