【論説】厚生労働省の統計不正問題を巡る国会審議で、統計結果に大きく作用する調査方法の変更に、首相官邸の関与があったのかが最大の焦点になっている。

 「毎月勤労統計」に関して2015年3月末、当時の中江元哉首相秘書官(現財務省関税局長)が厚労省側に調査手法について「問題意識」を伝えたとしている。20日の衆院予算委員会では、この問題意識を受け設置された有識者の検討会で調査手法を変更しない旨の結論がまとめられたこと、それを知った中江氏が検討委の委員長に変更するようメールで働き掛け、実際にそうなったとされる経緯が明るみになった。

 中江氏は「個人の考え」とし、安倍晋三首相の関与については否定している。だが、当時は加計学園の獣医学部新設を巡り、別の首相秘書官が学園側に国家戦略特区制度への申請を指南していた。学園理事長を腹心の友と称する首相への「忖度(そんたく)」が疑われ、いまだ真相はやぶの中だ。中江氏がアベノミクスを推進する政権に忖度したとしても不自然ではなく、首相の「問題意識」に沿って指南した可能性も否定できない。

 野党は、中江氏に対応した当時の厚労省の総括審議官や統計情報部長から話を聞く必要があるとして参考人招致を求めてきた。19日になって与党側がようやく応じ、22日以降招致されることになったが、こうした姿勢で早急な解明がなされるのか、首をかしげざるを得ない。それどころか、政府や与党は、統計不正問題で審議時間を稼ぎ、予算案を日程ありきで通そうとしている節がある。

 勤労統計不正ではこれ以外にも、15年間にわたって全数調査を不正に抽出調査に変更してきたことなど、解明すべき疑問はつきない。さらに、政府の基幹統計のうち34件の問題が見つかっている。直近のデータでいえば、「景気拡大が戦後最長になった」とする政府見解への疑義が専門家から指摘されている。

 14年4月に消費税率が8%に引き上げられたことで、2年近く景気が後退していた可能性があるからだ。政府が今年10月の増税に向け、増収分以上の対策費を盛り込んでいるのも、この時の景気失速を教訓にしている。かなりの落ち込みだったとすれば「戦後最長」には当然、疑問符がつく。

 今後、統計不正に関する特別監察委員会や統計委員会の報告が出れば、検証や対策に向け議論は多岐にわたる。予算委員会では対処しきれないはずだ。国家の信頼に関わる問題であり、与野党挙げて解決策を導き出さなくてはならない。ここは国会に特別委員会を設けることが欠かせない。

 自民党の小泉進次郎議員ら若手有志の勉強会は昨年6月に国会改革に関する提言をまとめ、行政を巡る疑惑解明に向けた「特別調査会」を国会に設置できるようにすべきと指摘している。二階俊博幹事長や大島理森衆院議長らが賛同した経緯もある。国民不信の払拭(ふっしょく)に向け、与党こそが範を示すべきである。

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