昨秋の公式戦は安積航大(右)と浦松巧の継投で勝ち上がった。両右腕ともレベルアップに励んでいる=福井県福井市の啓新高室内練習場

 背番号1はマウンドでいらだっていた。昨秋の福井県大会準決勝、金津戦。この試合まで計1失点で抑えていた安積航大の投球が通用しない。二回に3長短打で先制され、三回には3連打で2失点。「打たれたことが許せなくて、一人だけ気持ちが違う方を向いていた」。5失点で八回途中に降板。新チームの初黒星は「自分のせいだと思っている」。

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 身長184センチの本格派だ。すらりと長い右腕から繰り出す速球には切れがあり、制球力も兼ね備える。昨夏は2試合に先発するなど、実戦経験も十分。だが「調子が良くても崩れる」(安積)ことが難点だった。

 その悪癖が出た金津戦後、植松照智監督は厳しい言葉を投げかけた。「負のオーラが出ている。お前の背中を見て皆戦っているのに、それじゃチームは一つにならない」。はっとさせられた安積はその夜、寮の監督室を訪ねた。「もう一度チャンスをください」。エースが覚悟を決めた瞬間だった。

 それ以降、公式戦で安積が先発した試合は負けていない。「あの試合がなかったら北信越は勝てなかった。気持ちが一段階上がった」と自信を漂わせる。勝因はメンタルだけではない。「インコースに変化球を投げられるようになり、投球の幅が広がった」。心と技の成長が躍進につながった。

 もう一つ、大きな支えがある。浦松巧の存在だ。「信頼しているから、初回から全力でいける」と安積。浦松も言う。「ライバルというより仲間。大会中は後は任せろって思っていました」

 昨秋は10試合中8試合を2人の継投で乗り切った。「安積が試合をつくり、浦松でしのぐ」(植松監督)のが必勝パターンだった。浦松の登板はすべて六回以降。特に北信越は緊迫した展開の中で投げ続けたが、防御率は0・00と抜群の安定感を誇った。「ピンチに強い方ではなかったが、試合を重ねるごとに自信がついた。準決勝や決勝は『打たれるもんか』と思って投げていた」と飛躍的な成長を遂げた。

 守りが重要だ。そのスタイルは舞台を甲子園に移そうが変わらない。得意とする競り合いに持ち込めるかは、投手陣の踏ん張り次第だろう。「今のままでは通用しない」と安積。すべては、この冬の鍛錬にかかっている。

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 福井県の啓新高校が春夏を通じて初の甲子園切符をつかんだ。戦う姿勢、投打の分析、指導者の育成方法などから、チームの強さに迫る。

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