北信越高校野球の準決勝で上田西(長野県)に勝利し、喜ぶ啓新の選手たち=2018年10月22日、新潟県のハードオフエコスタジアム新潟

 「あの奥川恭伸投手と戦わせてもらえる」。昨秋の北信越大会決勝。最速150キロの怪物投手を擁する星稜(石川)との勝負に、啓新ナインは恐怖や不安よりもうれしさを感じていた。「自分たちは力も技術もない、ないない尽くしのチーム。強い相手と戦って、少しでも経験を積めると思うとわくわくした」(穴水芳喜主将)。

⇒「星稜と2試合も」啓新の原動力に
 
 「ノーヒットノーランだけはするな」と、植松照智監督が控えめな指示を出す。星稜は準決勝までの3試合で24得点、失点ゼロと対戦相手を投打で圧倒していた。だれもが力の差があると思っていた。

 しかし初回に3番穴水が内野安打で出塁し、手応えをつかむ。その裏、先頭打者に三塁打を浴び、ピンチを迎えたが、後続を連続フライアウトで打ち取った。「ベンチに戻ってきた選手の顔つきはこれまでと全く別物。自信に満ちあふれていた」(植松監督)。

 0―2の八回、野選と濱中陽秀の左前打で同点。流れは啓新に傾き、九回以降は星稜を上回る5長短打を放った。投げては、継投した浦松巧が無失点に抑え、延長十五回で2-2の引き分けに持ち込んだ。翌日の決勝再試合は4―7で敗れたが、五回に同点に追いつくなど意地を見せ、結果以上の経験を得た。

 快進撃の裏には、チームの変化があった。昨夏の福井県大会。前チームは個々の能力が高かったが結果は8強止まり。植松監督は「勝たせてやりたい思いが強く、一から十まで指示していた。新チームでは選手に任せてみようと思った」。

 どうすれば勝てるか、何が必要か―。選手たちは毎日寮でミーティングを行い、考えを深めた。県大会での敗戦の分析など、情報を共有した。

 紅白戦も役に立った。県大会後は、ほぼ毎日行い、微妙な勝負の分かれ目に気づくようになった。エラーをしたら試合を止めてどうすれば防げたかを確認した。4番の竹原翔は「足りないものを一つ一つ克服していった」と振り返る。

 穴水主将は「能力があると勘違いしてはだめ」と自らを戒める。地道に積み重ねた練習こそが力になる。持ち味の全員野球で“聖地”に挑む覚悟だ。

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 福井県の啓新高校が春夏を通じて初の甲子園切符をつかんだ。戦う姿勢、投打の分析、指導者の育成方法などから、チームの強さに迫る。

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