今春の福井県知事選への出馬を表明している前副知事の杉本達治氏(右)と、現職の西川一誠氏(左)

 春の福井県知事選を巡り、自民党福井県連が党本部に前副知事の杉本達治氏(56)を推薦するよう上申してから3カ月近く過ぎた2月14日。推薦より党の関与が弱い「支持」に落ちつくのではとの見方もある中、党本部が急転直下に出した結論は推薦だった。ただ、党幹部は党議拘束はかからないと明言しており、現職の西川一誠氏(74)を支援する県議や党員らの活動は制限されない。県連の意向を最大限に尊重しつつ、西川氏とその支援者にも配慮した党本部の高度な政治判断があったとみられる。

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 1週間前の6日午後1時ごろ、福井県議会議事堂の応接室に県連の斉藤新緑幹事長と田村康夫総務会長、田中宏典政調会長の三役をはじめ、田中敏幸会長代行、事務局職員らが集まった。中の様子はうかがい知れなかったが、知事選の推薦問題を話し合っていたとみられる。開始から30分ほどたったころ、出席者の一人が電話の相手先に「お受けした方がよろしいのでは。自民の旗は立てられるわけですから」と話す声が廊下に漏れ聞こえた。推薦か支持か、いずれかの結論がこの日のうちに示されるとみられた。だが、党本部からの連絡はなかった。

 この日は、山崎正昭県連会長が党本部で甘利明党選対委員長と推薦問題を協議したが、関係者によると面談の時間は県連三役らの会合後。つまり山崎氏は何らかの方針を甘利氏に示したものの結論は持ち越しとなった。この関係者は「党本部は県連が西川派県議の公認を保留扱いとしたことを憂慮したのでは」とみる。

 7日以降、水面下の動きが活発化した。山崎氏は西川派のベテラン県議と接触し、事態の打開策を模索したとみられる。斉藤氏も9日の全国幹事長会議で甘利氏に速やかな対応を求めた。これに対し甘利氏は「(県議選の公認問題で)一部誤解があり、ちゅうちょしたところがあった。それさえしっかりしてもらえればちゃんとする」と応じ、近く判断する考えを示した。

 14日の県連執行部会で、西川派を含む県議の公認問題が決着した。数時間後、波長が合ったように、党本部が杉本氏の推薦を15日にも決める方向で最終調整に入ったとの一報が関係者に伝わった。

 推薦問題の鍵を握るキーパーソンの二階俊博党幹事長は、西川氏と1月31日に会談した際に「党本部としては(杉本氏の)推薦を見送る公算」と伝えていた。それがなぜ、逆の結果となったのか。西川氏の関係者は「日々刻々と変化するのが政治の世界。会談後、永田町のさまざまな力学が働いたのでは」と推測する。これに対し、杉本氏の関係者は「土壇場で巻き返すことができた」と胸をなで下ろす。

 ただ、今回は通常の推薦と異なる。稲田朋美党筆頭副幹事長が「(党本部と県連の間で)党議拘束はかけないという約束は生きている」と明言しているように、県議や党員らが西川氏を支援しても処分されない。関係者は「県連の意思は最大限尊重しなければならない。なおかつ、堅実な手腕を発揮してきた西川氏とその支援者にも配慮する必要がある」とし「衆参同日選挙の可能性もある中、知事選後に県議や党員らがノーサイドで結束できる極めて高度な政治判断だ」と読み解く。

 西川氏は15日、杉本氏は17日に福井市内で大規模な決起大会を開催。タイミング的にもぎりぎりの着地点だった。

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