【越山若水】なんてことだ。できれば触れずにいたい。が、彼女はつらさをこらえ、勇気を振り絞って公表したのに違いない。応えなくてどうする、と自らを叱(しか)りつけつつ書く▼日本女子水泳界のエース、池江璃花子選手が白血病と診断されたという。水着の似合う健康美という容姿からすぐに連想したのは、女優の夏目雅子さんである▼同業の大先輩では朝日新聞の名コラムニスト、深代惇郎さんが思い浮かぶ。ともに多くの人々に鮮烈な印象を残し早世した。白血病を怖がってしまうゆえんである▼いわゆる血液のがん。医師に告知されたときの動揺は想像に余る。けれど、がんはいまや誰がなっても不思議ではない国民病だ。一方で医療も飛躍的に進歩し、治る病になった▼現に、30年前に発症した俳優の渡辺謙さんは再発をも乗り越えて復帰し、数々の米ハリウッド映画でも活躍している。その人からの助言は「前を向いて焦らず」。届いてほしい▼池江さんは去年の福井国体でも快泳を見せてくれた。敦賀市の会場には座席券を求める行列ができ、観戦した人たちは「別次元の強さ」に驚いた▼そう、伸び盛りの18歳は世界と対等に渡り合える実力を備えている。東京五輪のメダルを自然と期待したくなる。でも、いまは何より治療に専念してもらうのが先決問題。病気の克服にこそ「別次元の強さ」を発揮してほしいと願う。

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