【越山若水】せっかく大根を干したけど、けがをして動けんのや。30本ほどのもんやが、このまま捨ててしまうのも惜しいやろ。あんたが代わりにたくあん、漬けてくれんかな▼こんなSOSを受け取って、たくあん漬けに挑んだのが去年の12月半ば。50日ほどで食べごろになるというから、そろそろ頃合いである。さて漬かり具合は…▼少しばかり入れた色粉が効いて、ほどよく黄色に染まっている。でも塩辛い。お茶漬け一膳なら三きれもあれば十分なくらい。「いい塩梅(あんばい)」とは難しいものである▼発酵食がブームのようだ。2013年に和食が世界遺産に登録されたのに前後して、まず塩こうじが大もてになった。これに漬ければ肉や魚が柔らかくなり野菜もおいしい、と▼近ごろは甘酒にみそ、ぬかみそと幅広く手作りする人も増えた。隣の石川県にはベンチャー企業が運営する「発酵食大学」なるものがあり、広く全国へ展開していく勢いだとか▼いずれ下火になって消えるようなブームではない気がする。なぜ体にいいか、いまは科学の裏付けがある。食べていると確かに体調がいい。廃れる要素がないのである▼たくあん桶(おけ)をしげしげと観察すると、縁(へり)に黒っぽいカビが点々。だが、下へ繁殖する様子はない。塩が寄せ付けないのだ。その過酷な環境下でも乳酸菌は活発に働いてくれ、しょっぱいたくあんも円い味になる。

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