数カ月前から、左足の付け根に卵3分の1ほどの大きさの膨らみができます。押さえるとフグフグと音がし、熱を感じることもあります。朝、目覚めると膨らみは消えていますが、日中に立ち仕事をしていると、また膨らみます。痛みはなく、体調も問題なく、便も出ます。日常生活に支障はありませんが、少々気になっています。病気の可能性はありますか。(福井県高浜町、69歳男性)

【お答えします】泉俊昌 福井総合クリニック 院長・外科医

 ■鼠径部ヘルニアの可能性、腸管が壊死することも

 鼠径部ヘルニアと推察します。ヘルニアとは組織の隙間を通って、本来あるべきでない場所に臓器がとび出すことです。加齢や腹圧のかかる動作を繰り返したことによって組織の脆弱(ぜいじゃく)化が起こり、その隙間から臓器が脱出して発生します。

 鼠径部ヘルニアには、足の付け根のパンティーライン(鼠径靭帯)の頭側に脱出する鼠径ヘルニアと、鼠径靭帯の下方に脱出する大腿(だいたい)ヘルニアがあります。「立ち仕事をしていると膨らんでくる」とは、脆弱化してできたヘルニアの穴に腹圧が加わり、臓器が脱出した症状です。脱出する臓器としては小腸が多く、「フグフグと音がする」とは、脱出した腸管の中で空気が動く音です。

 大腿ヘルニアでは、ヘルニアの穴が小さいため、脱出した腸管がはまり込んでしまうことがよくあります。この状態をヘルニア嵌頓と呼び、早期に治療を行わないと、脱出した腸管は血流が途絶え壊死してしまいます。

 ■治療は外科手術のみ

 鼠径部ヘルニアの治療は外科手術のみです。今後悪化しても、改善することはありません。ヘルニアの穴を押さえ、腸管の脱出を予防する脱腸帯が市販されていますが、圧迫により皮膚障害や睾丸(こうがん)の萎縮を招く恐れがありお勧めできません。腸管の脱出を恐れて安静にすることもお勧めできません。ヘルニアをしっかり治して、活動的な生活をすることが健康を維持する基本です。

 手術の内容は、ヘルニアの穴を閉じて腹壁を補強することです。以前は自分の組織を用いた組織縫合法が中心でしたが、縫合部に緊張がかかり疼痛や再発の原因となるため、最近は人工のメッシュを用いた緊張がかからない術式が主流になっています。アプローチの方法により、体表からアプローチする鼠径部切開法と腹腔鏡下修復術があります。いずれの方法でも術後3日前後で退院可能です。

 日常生活やデスクワークであれば退院後すぐに再開できますが、重たいものを持ったりして腹圧がかかるような行為はしばらく避けてください。術後2週間を過ぎればスポーツも可能です。いずれの術式にも利点と欠点があります。主治医の先生とよくご相談してください。

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