【論説】衆院予算委員会で2019年度予算案の審議がスタートした。厚生労働省の統計不正問題を巡る質疑では、根本匠厚労相らの答弁が質問の趣旨に沿わないものが多く、時間を浪費しただけの印象が否めない。この問題だけに絞った集中審議、さらには特別委員会を設置し解明に尽くすよう求めたい。国民の生活に大きく関わる予算案の審議がおざなりになる事態は回避しなければならないからだ。

 政府、与党は予算案の早期成立を図る思惑から、参考人としての招致を拒んできた大西康之元政策統括官の出席には応じた。しかし、特別監察委員会の樋口美雄委員長に関しては、相変わらず厚労省所管の独立行政法人の理事長という立場での出席にとどめた。

 大西氏は「毎月勤労統計」で行っていた不正な抽出調査の原因を調べる責任者であり、「賃金構造基本統計」では不正な郵送調査が行われていたことを知りながら、大臣への報告を怠ったとして官房付に更迭されている。

 野党議員から不正発覚の経緯を問われた大西氏は「昨年12月13日に初めて知った」と説明。その上で厚労審議官や官房長ら上司への報告は18日に部下を通して行ったとした。5日後では対応の遅れは否めず、省の機能不全が改めて浮き彫りになったといえよう。

 一方の樋口氏は、当初の調査報告書に厚労省職員らが関与し第三者性が問われる事態になっていることについて、今後の調査に影響を及ぼすなどとして「答弁を控える」に終始。与党から監察委員長としての発言を認めないとしたためだが、樋口氏の表情からは苦衷(くちゅう)がみてとれた。

 今回の不正には疑問点が尽きない。全数調査から抽出調査に変更した動機や、18年1月から突然、全数調査に近づけるよう補正処理をした理由、さらには実質賃金の伸び率を示す、より的確な数値がいまだに示されないこともある。

 伸び率については、共通事業所同士を比較した「参考値」がデータとしてふさわしいことは政府側も認めている。昨年1~11月は大半でマイナスになっていたとする野党の試算を根本氏も事実上認めた。だが、政府試算の公表は「検討中」を繰り返すばかりだ。

 共通事業所の場合、サンプルが少ないことなどを理由にしているが、この日の答弁で調査全対象数の約3万事業所に対して共通事業所数は42%あることも明らかになった。「アベノミクス偽装」などと追及される中で「出したくない」が本音ではないか。

 加えて理解に苦しむのは、大西氏ら参考人の出席が野党議員の質問時間のみだったこと。統計不正は国家的な信用失墜だとの認識は与野党問わず同じはず。「徹底検証」などと声高に口にしながら、追及しようとしない与党の姿勢は隠蔽(いんぺい)に加担しているのも同然で、国会の行政監視機能という責務を自ら放棄したとみられても仕方ない。「政権の下請け」との揶揄(やゆ)を受け続けるつもりなのか。

関連記事