【越山若水】数学者の藤原正彦さんはベストセラー「国家と教養」(新潮新書)で、教養が衰退した大きな要因として、世界のアメリカ化と同国発のグローバリズムを挙げている▼長い歴史の中で育まれた教養主義を、米国では「自分たちの意志で捨てた欧州の遺物」であり、実用性のないものと忌避する傾向が強かった▼特にメイフラワー号で入植したカルバン派の人々は、新たな建国の指針を設けた。功利性や改良の追求は社会貢献につながる隣人愛の発露で、金銭獲得は神の祝福の証しだと考えた▼また世界を一つの共同体と見なすグローバリズムは、規制のない自由経済を信奉するあまり強欲主義に転化。その象徴がリーマン・ショックで、ペテンまがいの金融商品で悪魔の錬金術に手を染めた▼藤原さんの解説を聞いて、トランプ米大統領が行った一般教書演説をもう一度吟味した。上下両院の勢力がねじれる中「分断に橋を架け、古傷を癒やそう」と融和を求めた▼しかし根底にあるのは「米国第一主義」。「外国の敵を破るため団結すべきだ」と本音を明かし、軍事も経済も世界と対立する姿勢をより鮮明にした▼兄弟国とされる英米でも考え方は全然違う。英国人は古い町や道具を好み自慢話は醜悪と見る。対して米国人は新しい物好きで積極的に自慢をする。典型的な米国人のトランプ氏に教養の衰退を説いてもむなしい。

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