【越山若水】豚コレラは人にうつらないし、たとえ肉を食べたとしても平気だというので侮っていたのだろうか。岐阜から愛知へ、さらに長野、滋賀、大阪へと感染が拡大した▼地図を眺めると、福井など北陸が敵にほぼ包囲されてしまったのを思い知らされる。敵はもちろん豚コレラのウイルスだ。目に見えないだけに戦々恐々となる▼さかのぼると、豚コレラが日本で初めて発生したのは1887年という。品種改良のために米国から種豚を輸入したところ、多くの豚が死んだ。症状から推して豚コレラだったとされる▼このウイルスとの闘いは100年続き、一応の決着をみたのが1992年。こうして、貿易に不利な「非清浄国」から「清浄国」への仲間入りを果たした▼努力が水の泡、という養豚家の嘆息が聞こえそうだ。去年の9月に岐阜で26年ぶりに発生したのを受け、清浄国の国際認定が停止されている。感染拡大は一番恐れていた事態だ▼どうして、こうなったのか。騒動の渦中に誰かの責任を問うわけではない。ウイルスを媒介しているのはイノシシなのか、人か車か、突き止めなければ防ぐのは難しい▼そもそも封じ込めが成功して四半世紀もたって、なぜウイルスが現れたのか。世界の30カ国余りが清浄国を保っているのに…。白ずくめの集団が豚の殺処分をする異様な光景を見ながら、胸が痛んで仕方がない。

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