【論説】トランプ米大統領が向こう1年間の内政、外交の全般について説明する一般教書演説を行った。

 この2年間の政権の取り組みには「数十年間放置した諸問題に歴史的スピードで取り組んだ」「急速な成長で、米経済は世界の羨望(せんぼう)の的となった」と自画自賛を繰り返した。国を問わず為政者はまずは手柄を誇示するのが常道のようだ。

 一方で「共和、民主両党の党派対立を超え『一つの国』を目指す」などと結束を訴えた。目玉政策であるメキシコ国境への壁建設の実現を民主党に改めて求めるための擦り寄りに映る。昨秋の議会中間選挙で下院の主導権を民主党に握られ、内政では重要政策の停滞を余儀なくされている。

 しかし、分断をあおってきた張本人がいくら「結束」を求めても見苦しさは否めず、民主党の譲歩もあり得ないだろう。それどころか、今月中にも出るトランプ政権の「ロシア疑惑」に関する捜査報告書で疑惑が決定的なものになれば、民主党は大統領の弾劾も辞さない。再選を狙うトランプ氏に打撃を与えれば、政権奪回も視野に入る。

 当面は今月中旬に再び連邦政府機関の一部閉鎖に至るかが焦点。トランプ氏は非常事態宣言といった強硬策に出る可能性もある。内政面では足の引っ張り合いが常態化する懸念がある。

 その分、外交では民主党の縛りを受けないため強気一辺倒だ。演説で北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との再会談を今月27、28両日にベトナムで行うことを明言した。一般教書で外交日程に言及するのは異例というが、外交で点数を稼ぐしかない苦しさもにじむ。

 気になるのは、米国のビーガン北朝鮮担当特別代表が平壌(ピョンヤン)に到着したとの報道だ。非核化に向けた実務者協議が目的とされるが、再会談の事務的な詰めならまだしも、核心部分の協議だとしたら、昨年6月の初の首脳会談を前にトランプ氏が「延期」を口にしたような事態が再び起こりかねない。そのまま会談に臨んだとしても、成果を焦るトランプ氏が安請け合いする恐れもある。

 中国との貿易協議もしかり。昨年12月の首脳会談で中国の構造改革案をまとめることで一致。交渉期限の3月1日までに合意できなければ、貿易戦争の再燃は必至とされている。トランプ氏が中途半端な妥協をする可能性も否定できない。

 安倍政権は演説で日本への言及がなかったことをどう捉えるのか。貿易不均衡を巡る米国との2国間協議は、中国や北朝鮮問題を控え開始時期が先送りされている。ただ、中国との協議がまとまれば次は日本だという危機感をなくしてはならない。米朝首脳会談を前に拉致問題を再度、米側にすり込む必要もある。

 トランプ氏が自由貿易を声高に訴える同盟国を煙たい存在とみているなら、溝は深まるばかりだ。このところ安倍晋三首相と直接の話し合いがあった形跡はない。蜜月効果は弱まってきていないか。予測不能の事態に備えるべきだ。

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