【論説】東京圏へのさらなる人口の一極集中が明らかになった。政府は2014年に東京圏の転入者と転出者を「20年に均衡させる」という目標を掲げ是正策を繰り広げたが、事態は悪化するばかりではないか。安倍政権が打ち出した「地方創生」の看板が泣いているとしか言いようがない。

 総務省が公表した外国人を含む18年の人口移動報告によると、東京など1都3県は転入者が転出者を13万9868人も上回る「転入超過」だった。前年より1万4338人多く、一極集中が加速した格好だ。日本人に限定すれば転入超過が23年連続に及んでいる。一方、人口流出を意味する「転出超過」は福井県の2387人など39道府県。全市町村でみると、72・1%に達している。

 政府はこれまで、東京23区からの企業の本社機能移転や、文化庁の京都移転を推進。23区内の大学定員増を10年間禁止する措置や、地方創生推進交付金による自治体支援なども講じてきた。ただ、効果の程は当初からはっきりせず、結果的に一極集中に歯止めは掛かっていない。

 各自治体でも人口減少を食い止めるべく「地方版総合戦略」を策定し対策に取り組んでいる。だが、成果を挙げているのは、ほんの一部にとどまっている。国の交付金の仕組みが、成果のあった施策を他にも広める「金太郎飴(あめ)」型だったことは反省すべき点だ。

 人手不足は全国的な傾向で、東京圏は輪を掛けて深刻さを増している。20年の東京五輪・パラリンピックを控え、開発に伴う建設業やサービス業は慢性的に不足し、企業業績の改善も相まって拍車がかかっている。林立するタワーマンションを見れば「五輪後も人口流入の傾向は変わらない」との指摘もうなずける。

 政府が20年から始まる第2期の地方創生総合戦略に着手するため設置した有識者会議では、「ひとづくり」の強化を掲げているが、今更の感が否めない。「観光以上、移住未満」で地方に関わってくれる「関係人口」の増加も盛り込んでいる。ただ、福井県などでも取り組んでおり目新しさはない。「中枢中核都市」には周辺の人口を吸い上げることへの懸念も残る。

 安倍晋三首相は施政方針演説で「東京から地方へ移住し企業や就職する際に最大300万円を支給する」と述べた。充実した支援策を掲げる自治体は既にあり、どれほど成果が見込めるのか。それよりも、直下型地震などに備える観点から首都機能の地方移転や、企業の本社機能移転を進めるなど、いま一度、原点に返って議論を深める必要があるはずだ。

 首相は「特色を生かし、地方が自らのアイデアで、自らの未来を切り開くのが地方創生」とも述べている。その言葉通り、地方に権限や財源を移譲し、自治体が自由に競争できるような環境を整えるべきだ。地方税収が増えた場合、国の地方交付税が減額される制度などは早急に改めなければならない。

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