【論説】統計不正問題を追及するそばから、新たな不正が見つかる。ほかの統計には本当に問題がないのか、疑念が尽きない。

 厚生労働省の「毎月勤労統計」に端を発した統計不正は泥沼の様相を呈している。今度は同じ国の基幹統計である「賃金構造基本統計」で少なくとも2006年から「訪問調査」を「郵送調査」にしていたことが明らかになった。一斉点検で違反と知りながら隠そうとしていたというから機能不全も甚だしい。浮いた経費を何に使っていたのかも問われることになる。

 勤労統計問題では15年間も不正が行われながら、特別監察委員会がたった1週間の調査で「意図的とまでは認められなかった」と組織的な隠蔽(いんぺい)を否定した。不正に関わっていた厚労省職員らのうち7割近くは「身内」の職員だけで聞き取りをし、報告書の原案作成にも関与。幹部級の聴取には審議官や官房長が同席していたことも判明した。

 組織を守るため早期の幕引きを図るつもりだったのだろうが、調査自体が隠蔽目的との疑いを持たれ、行政への不信に拍車を掛ける事態になっている。発覚後は根本匠厚労相ら政治家が前面に出るべきだったが、対応のまずさが監察委調査の全面的なやり直しにつながったことは安倍政権の失態と言わざるを得ない。

 早期幕引きは統一地方選や参院選への影響を避けたいと考えた官邸の意向でもあったはずだ。安倍晋三首相がここに来て「事務局機能も含め、より独立性を高めた形で、さらに厳正に調査を進める」と述べざるを得なくなったのも当初は事態を軽く見ていたからではないか。

 基幹統計は政策判断の土台であり、不正確な統計は国際的な信頼も失墜しかねない。勤労統計に関しては過去の資料を紛失するなど、継続性の点で禍根を残す形となった。

 野党は、厚労省が昨年ひそかに行った補正処理は上昇率を上積みするためで「アベノミクス偽装」との疑いを指摘している。首相は、野党の支持母体となる連合のデータを引くなどし否定に躍起だが、基幹統計の重さを認識しているとは到底思えない。

 財務省の決裁文書改ざん問題は内部調査で幕引きした形だ。動機に関し問われた麻生太郎財務相は「それが分かりゃ苦労せん」などとうそぶくばかりで、前代未聞の不祥事に際し政治家は誰一人責任を取らなかった。そうした経緯が官僚全体のガバナンスの欠落につながっているとしたら政権自体の責任だろう。

 勤労統計の再調査や他の基幹統計の総点検などを行う監察委の「専門部会」は、中立の立場に徹し真相解明に努める必要がある。政府はその上で、統計調査は無論、組織の在り方にも検討を加えるべきだ。

 国会の予算委員会集中審議では、根本氏や厚労省の対応、さらには昨年の補正処理なども焦点になろう。首相は「責任を重く受け止めている」とした以上、真摯(しんし)に向き合う必要がある。

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