【論説】痛ましい事件がまたも繰り返された。昨年、虐待で命を落とした5歳の子が残したノートに日本中が衝撃を受けたが、今度は千葉県野田市で先月、小学4年の女児が亡くなった。事件の経過をみると、悲劇を防ぐ機会は何度かあった。しかしそのたびに市教委をはじめ関係機関は極めて後ろ向きで異常とすら映る対応を選択、機会は生かされないまま最悪の結果を招いた。

 千葉県警は、傷害容疑で逮捕した父親による虐待を調べている。それとは別に行政の対応について、国による徹底的な調査と再発防止が絶対に必要である。

 事件では、女児が父の暴力を訴えたアンケートのコピーを、市教委が父の要求に応じ渡したことが批判を浴びている。言語道断の対応であるが、これ以外にも多くの問題がある。

 2017年11月から行われた一時保護の期間中、柏児童相談所は、女児の顔に傷痕を確認した。頭部付近に繰り返し暴力を受けているとうかがわせるものだ。後に児相は緊急度を2段階下げたが、この判断は慎重になされたのか。同12月末の保護解除後、児相などの職員が一度も自宅を訪問していないのも問題だ。保護解除は、親子をその後も見守っていくことを前提として行われるべきもので、事案の終結を意味しない。

 異様なのは、18年2月、地元関係機関でつくる要保護児童対策地域協議会にアンケートコピーの件が事後報告されていながら、同3月に被害女児が親族宅から自宅に戻ったこと。虐待が激しくなる恐れは容易に推察できたはずで、ここで善後策を講じなかったのは悔やみきれない失態である。さらにこうした経緯にもかかわらず、年明けから女児が学校に行っていないことを児相は21日に把握しながら手を打たなかった。

 要保護児童対策地域協議会は児童福祉法に基づくもので、福井県内にも全市町に設けられている。虐待の情報があった場合、児相、市町、県、学校や保育所、医療機関、警察などの関係機関が情報共有し、対応を決めるとされる。これは特定の組織や個人だけで判断して、その結果対応を誤ってしまうことを防ぐ仕組みでもある。野田市の事件は協議会が通常通り機能していれば、どこかで防げた可能性が高いのではないか。

 このことは、協議会を法が定めているにもかかわらず、自治体により運用に温度差が生じていることを示している。千葉県の第三者委員会が検証するのは当然だが、政府も問題の所在を徹底的に明らかにし、すみやかに再発防止を図らなくてはならない。施政方針演説で「子どもたちの命を守るのは私たち大人全員の責任」と言った安倍晋三首相は、今すぐその言葉を実行に移すべきである。

 また、虐待の疑いに気付いたとき、住民には通告の義務があることを、改めて確認しておきたい。児童虐待防止法はこの義務について、守秘義務に関する法律の規定に優先すると明示している。大切な命を地域みんなの力で守りたい。

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