【越山若水】もやもやした感じとともに、20年近くたっても忘れられない官僚の言葉がある。原発の燃料データ不正問題の取材に関わったときのことだ▼不正が表面上まだ「疑惑」だった時期。管轄の資源エネルギー庁は既に決定的といえる証拠文書を把握していたが、地元への説明でも、再三の取材にも、担当者は一切触れなかった▼文書が明らかになった後、なぜ黙っていたのか担当者に聞くと、こんなセリフが返ってきたのである。「文書のことは聞かれなかったから」▼当時は、取材の甘さを情けなく思ったし、担当者を恨みたくもなった。けれどこのセリフ、担当者個人のものというより、どうも霞が関で長年使い回されているようだ。厚生労働省の統計不正問題で、同じ言葉が登場した▼発したとされるのは官房長。不正の責任を負う立場の当人ら省幹部が聴取に同席し、調査に不信を募らせた。国会の閉会中審査でその事実を伏せていた理由が「質問がなかったから」という▼問題はいまや統計そのものから「不正の調査における不正」へと発展している。身内調査に対して根本匠厚労相の「第三者性は担保されている」との強弁には脱力するほかない▼燃料データ不正は、プルサーマル運転が大きくつまずく結果を呼んだ。勤労など経済データの誤りを正せなければ日本全体がつまずく。だが首相の危機感はどこか薄い。

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