【論説】1月の月例経済報告は、国内景気が「緩やかに回復している」との判断を維持した。政府はこれで、2012年12月から続く景気拡大期間が74カ月になったと表明。確定するのは約1年後の有識者会議の後で、現時点では暫定的ながら、「いざなみ景気」(02年2月~08年2月)の73カ月を超えて戦後最長となったとの見解を示した。

 ただ、この間の物価変動を除く実質国内総生産(GDP)成長率は年率1・2%にとどまり、過去の景気拡大局面と比べ国民の実感は薄いだろう。景気のリスクは国内外で増しており、特に世界経済は減速傾向が明らかになってきた。経済運営はむしろ正念場を迎えている。政権は、実体経済の課題に真摯(しんし)に向き合う必要がある。

 景気拡大を引っ張ってきたのは、活発な企業活動と世界経済の二つが柱。日銀の金融緩和がもたらした円安株高が企業業績の向上につながり、リーマンショック後の世界経済回復が輸出を活気づけた。東京五輪関連などで設備投資が伸び、雇用情勢改善、訪日客増なども景気に寄与した。

 しかし、1月の報告は、設備投資、生産、企業収益など、企業活動に関わる判断の多くが据え置かれた。世界経済については「一部に弱さがみられる」との文言が盛り込まれ、警戒感がはっきり表れた。

 先行きに「緩やかな回復が続く」ことを期待しつつも、注意点として米国発の通商問題、欧州を念頭に置いた政策の不確実性などに加え「中国経済」を明記。これまでの「影響などに留意する必要がある」から「リスクに留意する必要がある」と表現を強めた。輸出、輸入の判断が下方修正されたのも、米中貿易摩擦への懸念からだろう。

 こうした中、とりわけ注意すべきは、10月に迎える消費税率10%への引き上げである。米中貿易摩擦解消の糸口が見えない状況下、中国の苦境が秋にはさらに深刻になっている恐れがあるためだ。

 安倍晋三首相は増税に備え「頂いた消費税を全て還元する規模の対策を講じる」としている。そもそも「全て還元」は増税の意味を損ないかねない政策だが、その大型景気対策も主眼は国内消費で、世界経済のリスクを思慮に入れたものとはいえない。企業活動への影響抑制と、摩擦解消に向けた外交努力の両面で着実な備えが必要だが、首相施政方針演説は米中貿易摩擦にほとんど言及がなく問題から目をそらしているかのようだ。日銀も海外リスクを軽視すべきでない。

 加えて、厚生労働省の統計不正問題が、経済データへの信頼性そのものを根底から揺るがしている。茂木敏充経済再生担当相は、毎月勤労統計の景気判断への影響を「それだけで見ているわけではない」と否定したが、指標の一つであることは動かせない。言葉で否定するだけでなく、過去の景気判断への影響の精査が必要だ。そうでなければ「戦後最長」は確定できないというべきだろう。

関連記事