博士号を取得した学芸員の出口翔大さん=1月18日、福井県福井市自然史博物館

 福井市自然史博物館(福井県)の学芸員で動物担当の出口翔大さん(29)が、仕事の傍ら鳥の生態を研究し博士号(農学)を取得した。鳥が大好きで子どもの頃に「鳥博士」と呼ばれていた出口さん。研究で培った知識を生かし「自然を自分の手で解明して、体験談として面白さを伝えていけたら」と意気込んでいる。

 出口さんは大学卒業後、いったん民間企業に就職したが、子どもの頃からの夢だった学芸員になりたいと2013年、新潟大学大学院に入学。15年に博士後期課程に進学し、16年に新潟県内の自然科学館で、翌年には福井市自然史博物館で学芸員として採用された。働き始めてからも研究を続け、昨年4月に博士号を取得した。

 研究テーマにはスズメの仲間の渡り鳥ノジコが好む自然環境と、田んぼの環境の変化が与える鳥への影響を選び、4年にわたり新潟で調査活動した。学芸員になっても休日には、早朝から山あいに出かけ、一日に環境が異なる田んぼ12カ所ほどを回って鳥を観察。雪で車の移動が難しい冬季は、10キロほど歩いて田んぼまで調査に行った。

 その結果、ノジコは日当たりが良く草が生い茂る森林の周縁部を好むことや、整備が行き届いたり、手つかずだったり環境が異なる田んぼでは、観察できる鳥の種類が異なることを発見した。

 福井で働き始めてからは、仕事後に毎日約3時間、休日は約8時間論文の執筆に明け暮れた。仕事と研究に忙殺される生活にも「どっちも好きなことをしてるからか、つらいと思ったことはなかった」と振り返る出口さん。「あだ名だったのに、本当の鳥博士になっちゃいましたね」とはにかんだ。

 現在は動物専門の学芸員として観察会などを開いている。これからは生態学の知識を生かして動物たちの意外な一面を伝えたり、身につけた調査方法で自然を解きほぐしたりして「実体験を基に“生きた”面白さを伝えたい」と話している。

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