【越山若水】どこかで見かけたような…と記憶を探ったら思い出した。永平寺中の生徒たちだ。校門を出入りするたび一礼する。その姿と、テレビの映し出した光景が重なった▼女子テニスの全豪オープンを制した喜びをしばらくかみしめた後、大坂なおみ選手はネットへと歩み出した。そして、対戦したクビトバ選手に軽く一礼をした▼会釈というよりお辞儀に近かった。普通は握手や抱擁だけ。頭を下げる選手は珍しい。日本人的だ。そういってもいい所作は謙虚さの表れであり、大坂選手の魅力▼日本人的だった所作をもう一つ見た。優勝者の記念撮影のとき、輝くトロフィーを前に置いて、大坂選手はきちんと膝をそろえて正座した。これまた珍しく、かわいらしかった▼大阪生まれながら、物心つく前に渡った米国で育った。だから「日本人初の世界1位」などとわれわれが大はしゃぎするのは、気が引ける。とは思いつつも自然に顔がほころぶ▼身長180センチのワールドクラスの体格とパワーは、ハイチ系米国人の父親譲り。その優れた素材に技術を伝授して磨きをかけたのは、米国の風土▼けれど心は北海道出身の母親、環さんが育んだのではないか。謙虚でひたむきで逆境に耐え忍ぶ心。そうして心技体が整い頂点に駆け上がった。まだまだ強くなる。世界中を魅了するキュートな女王の誕生に心からの拍手を送りたい。

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