啓新高校の荻原昭人校長(手前右)と握手を交わし、喜びを分かち合う穴水芳喜主将(同左)ら野球部員たち=1月25日、福井県福井市の同校

 また一つ、新たな扉を開いた。2012年4月に立ち上がった啓新高校(福井県福井市)の野球部。同じ年の夏に1年生だけで初勝利を挙げ、17年春には初めて県大会を制覇。そして2019年1月25日、第91回選抜高校野球大会に北信越地区代表として出場が決まった。創部7年目で念願の甲子園へ。自前の練習場所もないゼロからの挑戦は、ついに実を結んだ。

 12年4月21日、春の県大会1回戦。記念すべきデビュー戦は、ベンチ入りメンバーに満たない1年生16人での戦いだった。初代主将の山崎雄莉さん(22)は今でもよく覚えている。「観客席から『中学生が調子にのるな』って言われて。高校野球の大変さや重みを感じた。負けたけど、ここからがスタートでした」

 当初は専用のグラウンドがなく、練習場所を探し県内を回った。厳しい環境ではあったが当時の監督、大八木治さん(65)の熱血指導の下、夏には1勝、秋には創部わずか半年で4強まで上り詰めた。

 大八木さんは、東海大甲府(山梨)を率いて甲子園に通算11回出場している。その名将が野球以上に厳しく指導したのは人間教育だった。寮生活の不備や授業の姿勢が悪ければ、白球を握ることを許さない。荻原昭人校長(52)は「野球ばかを育てては駄目。一番は自立した人間を育てること。目標と目的をはっきりと分ける人だから、初代監督を任せられた」と話す。

 当たり前を全力で―。1期生からのスローガンは今も受け継がれる。穴水芳喜主将は「グラウンドに立てば全力疾走。先輩たちがそうだったように、学校生活では模範となれるような行動を一人一人が心掛けている」と言い切る。

 1998年、福井女子高校の男女共学化により始まった啓新。「女子校の歴史を閉じ新たな学校をつくる。野球部はその大きなエンジンになってほしかった」。荻原校長の願い通り、年を重ねるごとに学校内外で野球部の存在は大きくなった。「常にチャレンジャーだった。初心を忘れず、どんどん新しい歴史を築いてほしい」と山崎さん。甲子園出場はまだ序章。挑戦は始まったばかりだ。

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