【論説】安倍晋三首相が、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説し、自由で開かれた国際貿易体制の立て直しを訴えた。地球温暖化対策や海洋プラスチックごみ問題にも対応していくと述べた。日本が議長国を務め6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合で取り上げ、合意を図っていく決意を示したものである。

 いずれも世界が直面する難題であり、G20が解決を目指すべきなのは間違いない。議長国の発言には責任が伴う。日本は今年の議論を実効性あるものに導かなければならない。

 ダボス会議は、G20議長国が演説を行うことが通例である。今年は、政府機関閉鎖の対応に追われるトランプ米大統領、欧州連合(EU)離脱の混乱で手が離せないメイ英首相ら米欧主要国首脳の多くが欠席した。先進国がそろって国内対応を優先せざるを得ない状況の中、日本が何を発信するかが注目されていた。

 首相演説のポイントは▽ビッグデータ活用▽環境問題▽自由貿易―の3点。このうち環境問題では、二酸化炭素排出量を実質ゼロとするための吸着・資源化技術確立に向けて、G20が協力して取り組むこと、海洋プラスチックごみ削減へ世界の共通認識をつくるために、大阪での議論で「ジャンプスタート」を切ることなどを訴えた。

 一見、意欲的に映るが、問題は裏打ちとなる具体的な道筋である。日本は今もエネルギー政策の方向性が定まらず、石炭火力を一層使っていく計画も有している。昨年6月に先進7カ国(G7)首脳会議がまとめた「海洋プラスチック憲章」に、日本は米国とともに署名しなかったため国際的批判を浴びたことも記憶に新しい。日本がこれらの点を克服し、首脳会合で説得力ある提案ができなければ、たちまち世界の失望を招く。首相はそのことを、しっかり認識しておくべきだ。

 自由貿易に関して打ち出した「世界貿易機関(WTO)改革」も同様だ。米中が貿易摩擦で対立する中、G20議長国として避けて通れない課題ではあるが、容易に答えにたどり着けるものではない。日本の政策立案力や交渉力が試される正念場である。

 また、首相はデジタルデータについて、ガソリンに代わる成長のエンジンにしようと呼び掛け、「国境を意識せず自由に流通させるべきだ」と訴えた。ただ、ダボス会議にやって来なかった世界の指導者は、貿易摩擦やEU離脱、壁の建設などと、国境を挟んだ対立の中にある。どれだけ世界に響いたかは現時点ではよく見えないのが実情だ。

 首相演説は、前半部分の多くが内政成果の誇示に費やされた。そのためか、これら3点での提案は具体論が薄く、スローガン的に終わった印象は残る。議長国として“言いっ放し”は許されない。今後、G20各種会合に向けた実務作業で、ダボスで自ら背負った大きな宿題を果たしていく必要がある。

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