【越山若水】作家の開高健さんがベトナムで聞いた、何とも恐ろしいジョークがあるという。カエルとサソリの話で「水の上を歩く?」(TBSブリタニカ)に収録されている▼サソリがカエルに頼み込む。「背中に自分を乗せて川の向こう岸まで運んでくれ」と。するとカエルは「冗談じゃない。俺の背中を刺す気だろう」と拒否した▼「バカなこと言うな。川を渡る最中にお前を刺したら、俺も溺れちゃうじゃないか」。サソリの返事に、ごもっとも―と思ったカエルはサソリを乗せて渡り始めた▼ところがサソリは途中でカエルを刺し、結局は両方とも溺れ死んだ。カエルが最期に「どうしてこんな愚かなことをするんだ」と尋ねると、サソリが言い放った。「それが東南アジアというものさ」▼欧米諸国に抑圧された植民地支配の恨みを背景にしたジョークだが、何とも皮肉が効いている。元々はフランスの民話で、オチは「それが俺の性格なんだ」で終わるらしい▼韓国海軍による自衛隊機のレーダー照射や戦時中の元徴用工訴訟問題などで、韓国政府が繰り出す言い訳は、約束事を無視したサソリさながらである▼「足を踏まれた人はその痛みを忘れない」という韓国のことわざは承知しているが、被害者意識を強調する「恨(ハン)の文化」は卒業したい。お互いが協力し合うにも、毒針をかざしたままでは対話できない。

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