脳性まひで介助を受けながら1人暮らしをしている吉田詩織さん(左)=2018年12月、福井県福井市

 脳性まひで、生活に必要な動作全ての「全介助」が必要な吉田詩織さん(33)=福井県福井市=が、5年前からヘルパーのサービスや訪問診療などを受けながら、1人暮らしをしている。仲良くなった近所の老夫婦が、困ったときに助けてくれることもある。未熟児で生まれてから16歳まで、ずっと病院暮らし。「楽しい」「悲しい」といった感情がよく分からなかったが、「たくさんの人と交わり、地域の中で生きる喜びや幸せを感じられるようになった」と感謝している。

  ■痛いって何?■

 生まれてから、ほとんど寝たきりで、天井を眺めながら、看護師の声を聞いて言葉を覚えた。食事は鼻から管で栄養をとっていた。口から食べる練習をしていた小学生のときに、「パパ」「ママ」といった単語を話せるようになった。16歳で初めて自宅に帰った。

 決められたことを決められた時間に看護師にしてもらう入院生活では、喜怒哀楽の感情は分からないままだった。院内では笑顔を心掛けていたが、それは楽しいのではなく「周りが喜んでくれるから」だった。

 「痛い」という感覚も理解できなかった。幼いころから点滴や注射が当たり前で、「注射は痛いから怖い」という意味が分からなかった。最近、足を擦りむいたときに「これが痛いってことだよ」とヘルパーに教えてもらったが、痛みの感覚が正しいのかどうか今も自信はない。

  ■夏に軽井沢へ■

 1人暮らしへの漠然とした願望はずっとあった。28歳のとき家を出て、現在は福井市の県営住宅に住んでいる。手足はわずかに動き、携帯電話は使える。

 月~金曜日は朝晩2時間ずつヘルパーが来て、掃除や洗濯、食事の用意をしてくれる。水~金の日中は施設のデイサービス、土日はショートステイを利用している。

 2015年から、訪問診療などを担当する事業者のイベントに参加し、毎年夏に長野県軽井沢町に約1カ月滞在している。「遠出をしたことがなかったから、1回目は宇宙旅行のようだった」

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