元薬剤科長による医薬品の着服が明らかになった福井勝山総合病院=1月21日、福井県勝山市長山町2丁目

 何のために、どこへ抗がん剤を売却したのか―。福井県勝山市の福井勝山総合病院の元薬剤科長(55)が抗がん剤などの医薬品を着服し、違法に売却していたとされる問題。身近な病院の不祥事に、利用者からは憤りや不明な売却ルートへの不安の声が聞かれた。

 家族で病院をよく利用する勝山市内の女性(65)は「勝山に総合病院を残してほしいという思いがあり、去年は市民や市が寄付金も贈っているのに…」と驚いた様子で話した。

 元薬剤科長は、着服した医薬品を第三者に売却していたとされるが、地域医療機能推進機構は売却先を明らかにしなかった。同市内の男性(51)は「薬をどこへ流したのか。闇のルートがあるようで気味が悪い。(人の健康に関わる)薬の話だけに、全てを明らかにするべきではないか」と憤った。県内の薬局に勤務する薬剤師は「抗がん剤の場合、保険が適用される薬であれば、個人が欲しがることは考えられない」と指摘した。関係者によると、使用期限が迫ったり使わなくなったりした医薬品を買い取る業者があるという。

 医薬品の管理について、病院利用者からは「4年もの間、多額に相当する量の横領に誰も気付かなかったのだろうか」という疑問の声も上がった。福井市の福井県立病院は「全薬品について、患者の手に渡るまで複数の職員がかかわっており、発注量も毎日確認している。高額な薬品は毎月在庫量を管理しており、抗がん剤など特殊な医薬品は帳簿を作って管理している」という。

 元薬剤科長が会費未納により退会処分となる昨年7月まで所属していた県病院薬剤師会の高嶋孝次郎会長は「患者の信頼を損ねる行為で遺憾。研修会などを開き、再発防止に向け会員の綱紀粛正を図っていく」と話した。人柄について「病院での仕事ぶりは分からないが、会では明るくムードメーカー的な存在だった。こんな事件を起こすような人には見えず驚いている」と振り返った。

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 福井勝山総合病院の男性元薬剤科長が抗がん剤など約2700万円相当の医薬品を着服し、違法に売却していた疑いがあることが21日分かった。病院側は業務上横領と医薬品医療機器法違反(無許可販売)の疑いで刑事告訴状を提出しており、県警が捜査している。

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