【論説】行政主導で推進されてきた小浜市田烏でのサバ養殖事業が、地元に設立された株式会社に引き継がれることとなった。事業を永続させるため、市は「ゆくゆくは民間に」としていたが、有志の英断により移譲が実現した。民間の活力により、効率化や販路拡大がますます進むだろう。開始4年目にして事業は大きな節目を迎えた。

 養殖は、同市が鯖街道の起点であり、かつてサバ漁が盛んだった歴史を踏まえた「鯖復活プロジェクト」事業の一環として、2016年に始まった。市と市漁協、県立大、サバ料理専門店を展開する「鯖やグループ」などが連携して取り組んできた。

 年々、いけすの数を増やし、16年度に約650匹だった出荷数は17年度に約3千匹と大幅に増え、本年度は既に7千匹超え。さらに500~千匹の出荷を見込む。種苗を増やす努力はもちろん、市が中心となった営業活動で嶺北をはじめ関東、関西へと販路を拡大してきた成果だ。加えて昨年からは「小浜よっぱらいサバ」と銘打った、酒かすを餌に使った養殖ものが都会で人気を博している。

 ただ、事業は順調に規模を拡大してきたとはいえ、収支を見ると採算ラインにまだ届いておらず、販売の規模は1万5千匹とする必要がある。本年度の倍の量だ。

 こうした中、地元では「行政に依存せず持続させられないか」という思いが膨らんでいた。市としても民間移譲は大きな課題だったが、住民らが強い思いで立ち上がった。田烏の住民を中心に10人が発起人となって、1月16日に株式会社「田烏水産」を設立した。

 社長に就いたのは、小浜産サバを扱ってきた「鯖や」のグループ会社「クラウド漁業」の専務だった横山拓也さん=兵庫県出身。これまで田烏に駐在し、地元住民とともに養殖に取り組んできたが、今回の節目に当たり、同社を辞して、いわば“背水の陣”での参加である。急成長してきた同社の役員を務めていただけに、地元にとっては力強い。民間ならではのパワーを発揮してくれそうだ。

 新年度からは旧田烏小の校舎で冷凍施設が稼働する予定で、刺し身用に切り身にして冷凍し出荷するなど、付加価値を設けるアイデアも可能になる。また、市からの委託による養殖から脱却することで、コスト削減も期待できる。

 今回の株式会社設立で最も注目したいのは、市外の大資本による参入ではなく、地元が立ち上がった点だ。地域が主体となってこそ、細やかな地元本位の取り組みができるはずだ。容易な道ではないだろうが、市ともタッグを組みながら一層飛躍してもらいたい。

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