奥野宏さんの写真に、手記の完成を報告する紀久子さん=福井県南越前町

 保護増殖に向けた取り組みも詳しく記した。幼虫が3時間かけてまゆを作る動きの観察記録で「昆虫界の作法と人間界の違いか、人は失敗すると立ち止まり、振り返り、思考して作法を変えて次の仕事に取りかかるが、昆虫にはその流儀は通用しない。何が何でも我武者羅に同じ事を繰り返す」と記述。愛情を持って昆虫を見守る姿が伝わる。

 手記後半では、全ての自然を支配する摂理を「地球に存在する万物を創造し、それを支配する超巨大なる構想とエネルギーの根源には驚嘆し、言葉を絶する」と感動を込めて表現した。「ありのままの自然を深くしっかりと見つめ、創造の理念を理解し、万物がより良く過ごせるよう全力で努力することが肝要なのではなかろうか」と、人類の役割も訴えている。

 巻頭言を手掛けた養老孟司・東京大名誉教授は、奥野さんらと村国山(同県越前市)で小学生に虫捕りの授業を開いたことに触れ、「虫好きの人を育てていくことで、先生の遺志を継いでいければと思っています」としのんだ。紀久子さんは「夫のそばにはいつも自然があった。生き物たちに引きつけられ、吸い込まれるように研究に没頭し、謎解きを楽しんでいた。自然保護への思いが多くの人に伝われば」と話している。

 手記は自然に関する研究機関、町内外の学校、図書館、博物館などに寄贈する。

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