【論説】米中貿易摩擦、中国経済の変調、英国の欧州連合(EU)離脱などを要因に、2019年の世界経済は減速するとの見通しが広まっている。英のEU離脱は合意案を英下院が否決、経済混乱のリスクが高まった。日本は今年、20カ国・地域(G20)首脳・閣僚会議の議長国である。世界経済の安定へ向けて果たすべき役割は大きい。

 年末から年明けにかけての世界の金融市場は、米国株価の乱高下で大荒れとなった。その主因とされるのが、米中貿易摩擦への懸念である。両国の貿易協議は3月1日が交渉期限。それまでに妥結できなければ、高関税による貿易縮小、輸入価格上昇などが現実に起きる。日本への影響も少なくないだろう。

 米国は、一方的な保護主義が自国の利益も損なうことを一向に認識しようとしない。中国も、知的財産権の侵害や国有企業への補助金など、構造問題の是正の取り組みを、目に見える形で早急に示すべきである。

 今月9日まで行われた米中の貿易協議は、一定の進展があったとされる。ただ米国は昨年、交渉成果をほごにして追加関税発動を表明したことがあり、協議の行方は楽観できない。

 仮に米中貿易摩擦が沈静化に向かっても、米国経済は不安を抱えている。今年は大型減税の効果が薄れ、景気拡大にブレーキがかかるとみられるのだ。連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ路線も景気拡大には不利に働く。景気が順調なことが政権運営の頼みとなっているトランプ大統領が、FRBの動きに神経質になっているのはこのためである。

 米国の金利上昇は新興国の通貨下落と米国への資金流出につながる恐れもあるが、FRBはここへ来て利上げに柔軟な姿勢を見せ始めた。妥当な政策転換ではあるが、米国の景気動向を注意深く見守る必要性は増したともいえる。

 一方の中国も、すでに経済が減速しているとみられている。中国当局はインフラ投資などの財政政策と金融緩和で景気刺激を図る構えだが、不動産市場の過熱の抑制は細心のかじ取りが必要だ。輸出も、通信機器など下振れリスクが拡大している。

 EU離脱に関しては、英議会が離脱合意案を否決した一方で、内閣不信任決議案を否決。メイ政権に引き続き難局の対応を任せた。さらなる混乱が避けられたとはいえるが、離脱の道筋を探る取り組みは先が見えてこない。合意案はスムーズな離脱を図るためのものである。3月末に「合意なき離脱」が現実になれば、6月のG20首脳会合は混乱の中での開催とならざるを得ないだろう。

 G20首脳会合は08年、金融危機対応のために始まった。主要国が対立や混乱の起点となっている現状は、当時と比べても油断ならない。今年のG20の会議は財務相・中央銀行総裁代理会議で始まったが、議論を日本がどうリードできるかが、今年の世界経済の重要な鍵を握っている。

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