主に発達障害や自閉症がある人向けの災害時手帳「らいと」

 環境の変化や言葉でのコミュニケーションが苦手で、こだわりが強いといった特性がある発達障害者。大規模災害時に避難所を気軽に利用できず、孤立してしまう問題が起きている。発達障害への理解を促し、円滑な避難生活が送れるように福井県内の支援団体が作成した災害時手帳の普及が進んでいる。

 「発達障害のある人は見通しが立たないことや、いつもと違うことが苦手。災害時は不安がより強まりやすい」。こう話すのは、県内の発達障害者や知的障害者の母親らでつくる団体「にこにこクラブSUNFISH」代表の市岡公子さん(56)。

 2016年の熊本地震では発達障害者やその家族の多くが避難所に行くのをためらい、車中泊を余儀なくされた。18年の西日本豪雨でも、知らない環境の避難所を嫌がったり、生活環境が変わることでストレスを抱えたりといった事例が報告されている。

 同団体は17年度、主に発達障害や自閉症の人向けの災害時手帳「らいと」を作成した。縦15センチ、横10センチで、災害時にしてほしい配慮や自身が服用している薬を書き込むほか、避難所でのやりとりが円滑に進むよう「こわいです」「トイレ」「おにぎり」などのイラストを指さし、会話できるページを設けたのが特徴。発達障害の人は耳で聞く言葉より、目で見る絵や文字が頭に入りやすいからだ。

 手帳はこれまでに2千部作り、特別支援学校や障害者団体などに無償配布した。障害者の保護者でつくる「福井あゆみ会」もその一つ。会員約30人に配った上野孝子代表(58)は「こうした手帳はなかったので本当にありがたい」と言い「親が一緒に避難できればいいが、子どもだけで避難生活をすることになったら不安。周囲の支援はもちろん欠かせないが、障害者自身が手帳を使い、要望や不安を周りに伝えることが大切」と話す。

 市岡さんは、万が一の災害に備えて日常的に手帳を活用してほしいという。「学校や病院など普段の生活の場面で使うことで、発達障害者にとって分かりやすいコミュニケーション方法に理解が広まってほしい」と期待する。

 市岡さんのもとには「らいと」の配布を希望する声が今も寄せられており、4月をめどに「にこにこクラブSUNFISH」のホームページから印刷できるよう準備を進めている。合わせて「らいと」の所有者から内容に関する改善点も募っている。問い合わせはメールアドレスnikoniko.sunfish@gmail.com

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