【越山若水】進化論を唱えたダーウィンは経済にも通じていたらしい。アダム・スミスが主張したように、自由な競争があれば市場は有効に機能するというのが経済学の定説だ▼ところが動植物の個体間の競争を調べる過程で、ダーウィンはその論理に欠陥があることに気付いた。自然の中で個体は生殖に有利な変異を選好し生き延びる▼ただ正当な競争で勝ち取ったはずの形質や能力も、種にとっていつも優位に働くとは限らない。つまり個人の利益と集団の利益は、必ずしも一致しないという事実▼分かりやすい例を米国の経済学者でコラムニスト、ロバート・フランクさんが「ダーウィン・エコノミー」(日本経済新聞出版社)で取り上げている。アメリカアカシカの雄が持つ巨大な枝角である▼長さ1・2メートル、重さ18キロもある角は雌を奪う闘いでは強力な武器になる。だが木々が密集する山林では動きづらく、オオカミに捕食されやすいため、種全体の存亡に関わる▼さて世界を見れば、アカシカさながら、自身の利益ばかり追求する人物がいる。片や自国第一を振りかざし、片やお金の力をエサに一帯一路を進める▼国力の象徴たる経済力を誇示する米国と中国の競争、すなわち米中貿易戦争が年明けの市場を混乱させた。大国間の意地の張り合いは世界の景況に影を落とす。揚げ句に自国民の不利益を招かなければいいが…。

関連記事